ふるさと納税は、制度見直しでどう変わるか 野田総務相が自治体の競争過熱に「待った」

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今回の制度見直しには、副次的によい効果もあるだろう。これまで、どんな返礼品にするかや返礼割合については、地方議会の議決を経ずに首長や担当部局の裁量で決められた。その意味でふるさと納税の返礼品は、チェックが甘い仕組みであるといえる。

今回の見直しによって、ふるさと納税の適用を受けたいなら、返礼割合を3割以下にするよう求められるわけだから、3割以下になっていることを根拠をもって示さなければならないこととなる。その根拠は当然ながら、住民・国民に広く公表されることとなる。

そうすることで地方議会の議員も、ふるさと納税の返礼品の内容や返礼割合について、議会の場で質問などを通じて広く議論できるようになる。知事や市町村長は、返礼品について「やましいことがない」と、しっかりと議会で説明しなければならない。

これまで、寄付がいくら入ったかは議会にて予算や決算で示すことはあっても、返礼品のためにいくら使ったかを議会で説明する必要がなかった。返礼品は、寄付を受け取る手前で寄付者に渡すものであり、いったん収入として入った後で、議会での議決を経て執行する支出ではないからだ。

ふるさと納税制度の透明化が進む可能性

とはいえ、今後自治体は、どんな返礼品にいくら使い、だから返礼割合が3割以下になり、ふるさと納税の適用が受けられる、と根拠をもって示さなければならない。そうなれば、ふるさと納税制度の透明化に寄与し、返礼品合戦の過熱を抑える効果以外の点で、副次的によい効果になる。

一方、返礼品に関心がある人からすれば、返礼割合が下がるとふるさと納税のお得感が減るかもしれないが、それだけ自分の寄付が寄付先の自治体で活用してもらえる面を、評価してもらえるとよいだろう。

ふるさと納税制度の見直しは、今年末までに与党税制調査会で議論され、早ければ2019年の通常国会に地方税法改正案を提出、可決されれば、4月から適用されることになる。ぜひ実のある制度に見直してもらいたい。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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