手抜き授業をする「部活大好き教師」は辞めよ 前川喜平氏が示す「部活動改善」の方策とは?

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しかも、公立学校の教師の時間外勤務に対しては、給与特別措置法により、時間外勤務手当(残業代)は出ない。その代わりに本給の4%に当たる「教職調整額」が一律に支給されている。このような給与制度の下では、しっかりとした勤務時間管理は行われなくなり、時間外勤務の増加に歯止めがかからなくなる。

土日の部活動指導に対しては、部活動手当が支給される。文科省の財源措置上の考え方は、土日に4時間程度の指導を行った場合に3600円を支給するというものだが、具体的な支給額・支給方法は各給与負担者(都道府県や政令指定都市)の裁量に任されている。部活動手当は徐々に増額されてきたが、無定量の部活指導を教師に押し付けることの「免罪符」のようなものになっている。

無定量の残業を減らすためには、給与特別措置法を廃止して、公立学校教員にも労働基準法を適用すべきだというのが、筆者の年来の意見だ。

中体連はルール見直しを

文科省も教育委員会も、部活動による教師の負担増に対して、何もしてこなかったわけではない。

スポーツ庁は2018年3月、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を作成し、通知した。そこでは、学期中は週あたり2日以上(うち平日で1日以上、土日で1日以上)の休養日を設けることとし、長期休業期間中は同様の休養日を設けるだけでなく、ある程度長期の休養期間(オフシーズン)も設けることを求めている。

また、1日の活動時間は長くとも平日では2時間程度、土日・休業日は3時間程度とすることも求めている(ついでながら、土日の部活動を3時間程度にとどめようと言いつつ、部活動手当は4時間やらないと出さないというのは、文科省の矛盾である)。

学校の小規模化は、教師1人あたりの部活動指導の負担を大きくしている。1校あたりの教師の数が減っても部活の数は減らないからだ。そういう学校小規模化の影響を軽減する策として、市町村教育委員会レベルでは、合同部活動の取り組みが増えている。

日本中学校体育連盟の調査によれば、他校と合同で部活動を行っているチームの数は、2001年度の266チームから2017年度の1022チームへと増加している。ただ、他校から参加している生徒は大会に出場できないというような問題があるようだ。この点は、各地の中体連のルールの見直しが必要なのだろう。

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