「ミシュランシェフ」が体現する世界と戦う術 パリで起きている40年ぶりの日本リバイバル

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しかし、ある一定のところまでは感性で通用するものの、それだけでは世界トップクラスを目指すことはできないと手島さんは語ります。

「日本人はどんなメニューでも 70〜80点の料理は作れますが、100点の料理は作れません。なぜなら、0から1を創ろうとしないから。フランスは違います。100点を取るべく、みんなが 0から1を創ろうとしている。フランスの料理人は、“1%の天才と99%のバカ”でできているというのが、私の所感です。

私はあくまでも100点を目指したい。そのためには自分だけのアイデンティティを確立させること、つまり突き抜けることが大事だと考えています。“全体的に悪くないけど、どこどこの店に似ているよね”とは思われたくありません。どんな料理を出しても、PAGESっぽいと思われるような、自分の店でしか味わえない体験を提供したいのです」(手島さん)

手島さんが食材を研究する理由

オリジナリティを追求するために、手島さんはオーナーシェフを務めるかたわら、高級精肉生産元や高級生鮮食品卸会社などで食材を研究されています。目的は、自分が知らないことを補完するためです。

海外からは「日本人シェフは魚が得意だけど肉は苦手」というイメージを持たれており、事実、手島さんも肉のことをあまり知らないというコンプレックスを抱えていました。

日本では部位がパックされた状態で売られることが多いため、本当においしい場所を自分で見極めながら肉を切り取る機会はそうありません。

「和牛だからこの部位はきっとおいしいだろう」という前提も、海外では無根拠として扱われます。肉が苦手なら肉を学ぶ、包丁の研ぎ方がわからなければ包丁を学ぶ。そうして自分の弱点を埋めることが、オリジナリティあるメニューづくりを支えていると言います。

次ページ守りの姿勢は一切取らない
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