ホームステイで伸びる子に共通する「姿勢」 せっかくの時間と費用を無駄にしないために

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ところでアメリカではよく選択を迫られます。人の家を訪れると「What would you like to drink?(何飲みたい?)」と尋ねられ、レストランでの食事にサラダがついてくると「What kind of dressing do you like?(どのドレッシングがいいですか?)」と多くの種類の中からドレッシングの選択を迫られ、日が長いので夕飯が終わると「What do you want to do tonight?(これから何したい?)」と聞かれます。

日本では「(あなたと)同じでいい」と、他人と同調することが多々あります。レストランのドレッシングを選ぶことなどあまりありません。けれども、アメリカなどではそれは通じません。いつでも同調していると「自分で判断する能力がない」と思われてしまうのです。

ホームステイは子どもの自立の一歩

こうして、子どもが初めての体験をしているときに、よくないのは日本にいる親が電話やメールで連絡を取ることです。せっかく子どもが頑張ろうとしているのに、後ろから引っ張るようなものです。「かわいい子には旅をさせよ」とは昔からのことわざですが、インターネットなどの通信が発達した現代でも、子育てには必要不可欠な心掛けです。

ホームステイは単なる旅行ではありません。子どもの自立の一歩でもあります。相手の家庭に入って、自分で判断して行動し、相手に迷惑をかけないようにできるだろうか。親も子どもを信じて待てるだろうか。参加するまでに準備したいポイントです。

子どもを大きく成長させるホームステイですが、大切なのは日本語が話せる人が近くにいない環境と、ある程度の期間です。近くに日本語が話せる人がいると、恥ずかしくて英語が話せなかったり、思い切った行動をとれなかったり、なかなか自分の力を発揮することができません。2、3人で1軒の家にホームステイすれば、当然日本語を話してしまうでしょう。せっかくホームステイに行ったのに日本語を話していたのでは意味がありません。

また子どもの場合、英語や生活に慣れるのに時間が必要です。1週間では相手の英語を聞き取れるようになるのに精いっぱいで、自ら英語を発するまでには至らないようです。また異文化の壁にぶち当たったときに、それを自らの力で乗り越える時間も必要です。

子ども、そして受け入れたホストファミリーが、満足ができるホームステイを実現するには、事前にプログラムの中身を吟味して選ぶなど、準備が欠かせません。準備が終わったら後は、心を開いてファミリーの一員になるべく奮闘するだけ! 子どもを信じて背中を押してあげてください。

木原 竜平 ラボ教育センター 教育事業局長

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きはら りゅうへい / Ryuhei Kihara

1987年、筑波大学卒業、ラボ教育センター入社。東京、名古屋、大阪にて営業、指導者研修を担当。2002年より東京本社にて、外国語習得、言語発達、異文化理解教育について専門家を交えての研究に携わる。日本発達心理学会会員。日本子育て学会会員。ラボ・パーティは1966年「ことばがこどもの未来をつくる」をスローガンに発足し、2016年に50周年を迎えた子ども英語教育のパイオニア的存在。
 

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