ホンダ「N-VAN」考え抜かれた姿形が得た果実 随所の設計は荷物だけでなく人にも優しい

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サイドの3本線のキャラクターライン(筆者撮影)

そこで考え出したのがボディサイドを走る、某社のスポーツウエアを思わせる3本のキャラクターラインだった。単なる飾りではなく、ほぼ平面のパネルに剛性を与える目的もあった。インテリアもインパネやドアトリムは、3本の梁で剛性を確保している。これがないとインテリアのパネルがペコペコになってしまうという。

さらに荷室右側の壁には興味深いディテールがあった。

荷室脇の定規(筆者撮影)

「ここには40cmスケールの定規を付けてあります。工事現場での打ち合わせで、材料の寸法をすぐに測れるようにしました。この部分は車載工具入れになっており、定規は蓋でもあるので取り外しもできます。外して通常の定規に近い使い方をすることも可能です」

セパレーター(筆者撮影)

もうひとつ、メーターとセンターパネルの間の窪みに差し込んであるオレンジのパーツ、セパレーターも紹介しておこう。すぐ上にあるUSBジャックから出たコードを巻き取ってコンパクトに収納するために用意されたが、必要ない人はキーホルダーとして使えるよう穴を開けてある。突起をカットするとエンブレムのHマークに近くなるよう造形したそうだ。

カラーはオレンジで、同じ色をシートのレバーにも使っている。薄暗い場所でも操作しやすいよう、アウトドア用品の識別色からヒントを得たという。目立たない色でまとめがちだった従来の車両とは対照的な発想だ。

アイデアメーカーとしてのホンダは健在

ホンダというとスポーツイメージを抱く人が多い。しかし筆者はアイデアのメーカーだとも思ってきた。運転免許取りたての時期に初代「シティ」や3代目「シビック」などの登場を目の当たりにしたこともあるが、創業者・本田宗一郎氏の掛け声で1970年から始まった「オールホンダ・アイデアコンテスト(通称アイコン)」の影響もある。

インパネ(筆者撮影)

鈴鹿サーキットなどで開催された大会の様子を雑誌で見ながら、いい意味での遊び心をホンダに感じた。それが量産車にも反映していると実感していた。しかしアイコンは宗一郎氏が世を去った1991年を最後に開催されなくなった。そのあたりから量産車に遊び心を感じることは少なくなっていった。

でもアイデアメーカーとしてのホンダは健在だった。それをN-VANで感じた。「開発は楽しかったのではないですか?」と山口氏に尋ねた。

「いろいろ提案が出てまとめるのが大変でした」。山口氏は笑みを浮かべながら答えてくれた。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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