“大きさ”以外にも欠点、逆風の新国立競技場 神宮外苑は風致地区。槇文彦氏が再考を訴える

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コンクリートの壁

神宮外苑は風致地区であるとともに住民が生活する場でもある。新国立競技場の高さは高い所で70メートル。上空から見た斬新なデザインは地上に暮らす人々には何も関係ない。人々が目にするのは、空高く伸びるコンクリートの壁である。

「人々が下から見たときの景観がまったく伝えられていないのが問題。そこで生活する人、ジョギングする人がいるということ。(16年五輪のメイン会場候補地だった)晴海に造るのであればいいだろうが、神宮はそういう場所ではない」

大きな施設は広い場所に造るのが建築における常識であるにもかかわらず、今回の募集要項は、その常識を無視しているともいう。

「仮設スタンドを多く作ったロンドン五輪のメインスタジアムが象徴的だが、成熟社会、成熟都市ではスタジアムは名所にもならない。スタジアムはルーブル美術館やエッフェル塔とは違うものであるということを認識すべきだ」

新国立競技場の建設計画がいかに無理をしているか。それは最近の五輪会場との比較でもわかる。

北京の場合は21万平方メートルの敷地に、26万平方メートルの延べ床面積を持つ「鳥の巣」を建設、ロンドンでは16万平方メートルの敷地に延べ床面積10万8500平方メートルの競技場を建設した。それに対し、東京はロンドンの70%の敷地に3倍規模の建物を建設する計画だ。

収容人数8万人のロンドンでも、常設は2.5万人で5.5万人分は仮設席。都心からのアクセスが悪い郊外に立地していること、同じ市内に9万人規模のウェンブリー・スタジアムがあることも影響しているが、成熟都市における五輪施設の一つのモデルケースといえるだろう。

「このクラスのプログラムを作るときには、公開ヒアリングなどのプロセスを経るべき。しかし、それをやらないまま、話がどんどん進んでしまった。国民や都民の合意を得ないままに一人歩きした計画といわざるをえない」

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