小田急「自動運転バス」で夢見る鉄道新時代 移動から買い物まで「1つのサービス」に

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では"Mobility as a Service"となるとどうなるか。最もわかりやすいのは自動車業界のそれだろう。車両を購入することなく必要な時に車両を呼び出して利用し、使った分だけ課金されるというものだ。近年ではトヨタ自動車が特に力を入れるようになり、毎週のように新たな取り組みが発表されている。例えば、カーシェアリングサービスもMaaSの一種だ。

では、これを公共交通に置き換えるとどうなるか。鉄道・バス・タクシーは一種のMaaSととらえることも可能だ。駅まで行き、鉄道を利用し、距離に応じた分課金される。このモデルだけ見るとMaaSに見えなくもない。

しかし、現状の鉄道やバスのサービスは個人個人が感じているであろう細かい欲求には対応しきれていない。自宅から駅やバス停までは距離があって歩くのが大変だったり、駅やバス停に着いてもすぐに電車やバスはやってこなかったりする。雨の日は駅やバス停まで行くのが憂鬱になる人もいるだろう。またラッシュの混雑した車両に乗り込むのが好きという人はいないだろう。要求はさまざまだが、一貫しているのは「できるだけラクな移動をしたい」ということだ。

複数のモビリティを1つのサービスに

公共交通における「MaaS」が目指すのは「家を出てできるだけ徒歩移動や待ち時間がなく、『個人に最適化された快適な移動』がオンデマンドで提供される輸送サービス」だ。そのためには、鉄道・バス・タクシー・シェアサイクル・小型モビリティといったものをシームレスにつなぐ案内や決済技術が必要になる。

小田急グループのバス事業者、神奈川中央交通は神奈川県内の広い範囲で路線バスを運行しており、都市部から山間部まで幅広いエリアをカバーする(筆者撮影)

現在あるものを組み合わせるだけでも十分にMaaSを提供することは可能だ。例えば、経路検索サービスで経路を案内してもらい、その中から選択した経路にタクシーやデマンド交通がある場合、これらを自動で予約することが可能になれば、これは立派なMaaSとなる。

小田急はMaaSをどうとらえているのだろうか。小田急電鉄経営戦略部・西村潤也課長代理はこう語る。「MaaSについての意味は多様だ。小田急としては複数のモビリティが1つのサービスとしてとらえ、将来的には情報提供、料金体系、そして決済が一元化できるものを目指す。また、商業施設やホテルの予約・決済もできるようにしたい」。

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