実家を相続したときに取るべき2つの選択肢 2022年以降、空き家は売るに売れなくなる!?

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空き家問題は、いまのところ主に地方の問題と見られている。だが、東京などの都市部も無縁ではない。東京都心を中心に人口の流入は続くものの、その流れは徐々におさまっている。しかも、東京オリンピックの2年後の2022年に、土地の供給が一気に進むと観測されているからだ。

「1992年に生産緑地法が改正され、都市の環境保全のために、市街化区域にある500㎡以上の農地などを『生産緑地』と指定し、固定資産税などの税金を優遇していました。この生産緑地制度はちょうど30年後の2022年に、所有者が死亡したり、農業をやめたりする場合、自治体が買い取ることになっているのです」(前出・吉野氏)

2022年以降も引き続き農業を営む場合、この制度は継続適用される。しかし、実際は跡を継ぐ後継者がいないところが多いため、これらの農地の多くが宅地に転用される可能性が高まっている。また、自治体がこれらの農地を買い取ることになっているが、財政難の自治体が多いなか、すべてを買い取ることは難しそうだ。

そこで、最後に残る選択肢が「売却」というわけだ。生産緑地は、世田谷、杉並、練馬などの東京23区の中でも広がっているため、アベノミクスによる地価の高騰が続く東京の不動産市場を揺るがすのではないかといわれる。

築40年の「ボロ物件」でも高く売るコツとは?

では、こうした事態が起こる前に、売却するためのコツなどはあるのか。
「相続する物件は古いものが多いので基本的に上物には価値がなく、土地の価値で価格が算出されます。マンションの場合、多少おカネをかけてリフォームをすることで、リフォームにかけた金額以上で売却されたケースも少なくありません」(同)

吉野さんが成功例として挙げるのが以下の例だ。東京・城北エリアにある中古マンションで、場所はJR山手線の駅から徒歩5分という好立地にあったが、築40年以上のため、そのままの状態なら1800万円と査定された。だが仲介業者からは、1800万円でも買い手がつかないのではといわれたので、500万円かけてリフォームした結果、2600万円で売却できたのです。

「売却することで空き家保有のデメリットを解消できますし、こうして含み益まで出れば万々歳でしょう」(同)。

もちろん、売却益が生じた場合、譲渡所得として所得税・住民税の課税対象になる。購入したのが何十年も前のため、取得額がわからない場合は売却価格の5%で算出する。この場合、売却益および譲渡所得に対する税金が多額になる可能性があるので、注意すべきだ。ただし相続発生から3年目の年末までに売却すれば、3000万円の控除が受けられる可能性がある。

もし実家を相続する場合、「とりあえず放置」ではなく、「活用する」か「売る」かを選択し、いち早く行動に出ることで、相続した実家が将来の足かせにならずにすむはずだ。

伊藤 洋次 ジャーナリスト、編集者

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いとう ようじ / Yoji Ito

立教大学卒業。複数の出版社に勤務。雑誌、書籍の編集などを経て現職。Webサービスの企画、開発なども行っている。

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