BMW2シリーズ「7人乗り」3年目で見せた進化 グランツアラー改良、前輪駆動の何が悪い!

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やや引き締まった足まわりのMスポーツということもあって、220iはワインディングロードでのステアリング操作に対し敏感な反応を見せる。ミニバンに求められる乗り心地をギリギリ犠牲にしない範囲でグッドハンドリングを追求している。腰高な印象はなく、ルームミラーで室内を覗き込まなければ背の高い7シーターだと意識することはない。

最高出力192馬力、最大トルク280Nmの2リッター直4ターボエンジンは変更なし。トランスミッションが8速ATから7速DCT(デュアルクラッチ式)へと変更された。これはパワートレーンを共有するBMW MINI(ミニ)の都合だ。DCTというと瞬時に変速が完了するスポーティな動作を想像するかもしれないが、220iのそれはクルマの性格を考慮してか滑らかさを優先したコンベンショナルなトルコン式ATに近い変速に終始する。

続いて「218d xドライブ ラグジュアリー」に乗り換える。xドライブとは4WDのこと。2リッター直4ディーゼルターボエンジンは、排ガス規制対策としてアドブルー(尿素水溶液)を用いるようになった。最大トルクが350Nmと従来型よりも20Nmアップした。最高出力150psは従来どおり。トランスミッションはミニのディーゼル同様に8速ATを採用する。

一般にエンジンの直噴化、ターボ化によってガソリンエンジンも低回転域から力強くなったが、依然として同じような排気量同士を比較すればディーゼルのほうが力強い。218dも発進直後からグイグイと力強い加速を味わわせてくれる。セレクターレバーを横に動かしてスポーツモードを選ぶと、スポーツカーを出し抜くかのような加速を見せる。ステアリング操作に対する反応はMスポーツよりもマイルドで、乗り心地もソフトだった。

どちらのエンジンにするか迷っている人に対しては「多人数乗車、あるいは荷物を満載する頻度が高いであろうグランツアラーだけに似合っているのはディーゼルですよ」とアドバイスするが、相対的な話にすぎず、絶対的な力強さよりも伸びやかな回転フィーリングを優先する人もいるのでガソリンエンジンを否定するつもりはまったくない。

このほか、ベージュとオレンジの新色2色が加わり、ホイールデザインも刷新された。インフォテインメント系をつかさどるiDriveは最新版へのアップデートを果たした。

多用途性を備えた魅力的なモデル

長らくエンジン縦置きの後輪駆動車をつくり続けてきたBMWだけに、ミニシリーズと機関部分を共有する前輪駆動車をラインナップすることに眉をひそめる信者が一定数存在するのは確かだろう。けれど、メルセデス・ベンツは「Aクラス」や「CLAクラス」といった前輪駆動のNGCC(ニュー・ジェネレーション・コンパクト・カーズ)で台数を増やしているし、自社の4輪駆動車を「クワトロ」と呼んで誇るアウディも、ベーシックモデルは前輪駆動車中心だ。BMWに前輪駆動車がなかったことのほうが不思議なのだ。

BMWの名に恥じないハンドリングを味わえる(写真:BMW)

多くの人は前輪が回っているか後輪が回っているかを大して気にしていない。問題は魅力的かどうか。そういう意味で、2シリーズグランツアラーは同クラスのミニバンにないディーゼルを選ぶことができ、BMWの名に恥じないキビキビとしたハンドリングを味わえ、5人乗車で広々、いざというときに7人乗車可能という多用途性を備えた魅力的なモデルであり、ここまでの3年間でよく売れたのがわかるし、今回ブラッシュアップされたことでもうひと伸びするのではないだろうか。

塩見 智 ライター、エディター

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しおみ さとし / Satoshi Shiomi

1972年岡山県生まれ。関西学院大学卒業後、山陽新聞社、『ベストカー』編集部、『NAVI』編集部を経て、フリーランスのエディター/ライターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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