65歳定年男性が陥った株式投資の危ない心理 5000万円の資産がわずか10分の1に激減

拡大
縮小

当然、N男さんもそれなりにまとまった金額を相続しましたが、お父さんとは違い、相続した現金を教育資金、住宅購入資金などに分け、しっかりと貯蓄しました。

一方で、お父さんは、ちょうど定年退職になったということもあり、株式投資を始めることに。遺産の一部を投資する程度ならよかったのですが、なんと、お母さんから相続した財産のほぼ全額の約5000万円を株式に投資してしまったそうです。N男さんはその事実を知って、愕然としたそうです。

なぜ、お父さんは巨額の資金を株式に振り向けたのでしょうか。前述した通り、お母さんが高い年収を稼いでいたわけですが、お父さんは一般の会社員だったので、年収は800万円程度。かなりの年収格差がありました。夫婦仲はよかったそうですが、実はお父さんは密かにこの収入格差に悩んでいたそうです。

「収入も財産も妻の方が上なのは、男として情けない…。自分が死ぬときは妻よりもたくさんの財産を残したい!」と、株式投資で一発逆転を狙ったということです。

約5000万円の資産が、500万円に

お父さんは、遺産を手にするまで全く投資をしたことがなかったので、証券会社の窓口に行って情報を収集。証券会社のオススメの株を中心に投資をしていました。ところが買った株のほとんどが値下がりしてしまうという深刻な事態に陥ってしましました。

しかも、それだけではなかったのです。損を取り戻そうと、付け焼き刃の知識で信用取引(証券会社などからおカネと株を借りてする取引のこと)にも手をだしてしまったのです。しかし信用取引でも失敗、買った株がどんどん値下がりし、ついには、追い証(追加証拠金の差し入れ)までしなくてはいけなくなったそうです。

それまでお父さんは、N男さんには内緒で株式投資をやっていたそうですが、5000万円の資産が残り500万円となってしまったときに、打ち明けられたとのことでした。

次ページN男さんの父はどうすべきか?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT