4~6月に残業が多いと年収が下がるカラクリ 知らないと損をする!社会保険の知識

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ところで、この標月の決定方法ですが、実は、業種や職種の特性により、毎年4~6月が繁忙期で、他の時期と比べて著しく変動しているような場合は、例外的に「年間給与の平均」で標月を決定してもらうことができるのをご存じでしょうか。

具体的には、①「通常の方法(4月~6月で決定)で算出した標月」と「年間平均(前年7月~当年6月)で算出した標月」に2等級以上の差があること、②この2等級以上の差が業務の性質上、例年発生することが見込まれること、③被保険者がその方法に同意していることが要件になっています。つまり、毎年春(4~6月)が業種や職種の性質上、他の時季に比べて忙しければ、例外的に認められる可能性があるということです。

したがって、たとえば、4~6月以外の月は残業もほとんどなく月給30万円程なのに、4~6月は決算で毎年繁忙のため、残業代を含めて月給50万円ほどもらっている(年収420万円)といったケースでは、原則通りに計算されると標月は50万となり、社会保険料は、健康保険料が2万4750円(協会けんぽ東京支部平成30年度)、厚生年金保険料が4万5750円(平成30年度)になります。

一方、年間平均で計算される場合は、(30万円×9カ月+50万円×3カ月)÷12=35万円となるため、標月は36万円となり、実態に合った金額で決定してもらえるのです。

なお、社会保険料は、健康保険料が1万7820円(協会けんぽ東京支部平成30年度)、厚生年金保険料が3万2940円(平成30年度)になるので、年間平均を用いない場合と比べると、月に約2万円も差がつくことになります。

ただし、注意が必要なのは、標月が下がるということは、ケガや病気で会社を休んだ際の傷病手当金や出産した際の所得保障である出産手当金等の給付額、また将来の年金等も少なくなるということです。この点を十分理解したうえで手続きをする必要があります。この手続きは通常7月上旬に会社経由で健康保険組合、年金事務所に手続きをすることになりますので、気になった方は自社の担当者に相談してみてはいかがでしょうか。

年金は時短勤務になる前の標月で計算してもらえる制度

2.3歳未満のお子様がいる方は必見

3歳未満の子を養育する会社員が、短時間勤務の措置等により、給与が減って標月が下がった場合は、本来はその標月を基に保険料も将来の年金も計算されることになります。しかし、あまり知られていませんが、被保険者が申し出ることによって、将来の年金は短時間勤務になる前の標月で計算してもらえる制度があるのです。

たとえば、子どもが生まれる前の標月が50万円だった方が、短時間勤務などで標月が30万円に下がった場合、申し出ることによって、保険料を計算する際は標月30万円、将来の年金を計算する際は、従前の標月50万円として計算してもらえるのです。

具体的には、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」に戸籍抄本と住民票等の書類を添付して、会社経由で年金事務所に届出することになります。この制度にはデメリットがないため、標月が下がった方はぜひ手続きしておくことをお勧めします。なお、申し出れば2年間はさかのぼってくれるので、該当しそうな方は今すぐ確認してください。ちなみに、1度届出されている方であっても、転職すると再度転職先で出し直しが必要となるのでご注意ください。

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