中国エリートに聞く、中国経済崩壊論の真偽 中国経済は本当に危機なのか?

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成長率は鈍化したが、皆、中国に投資せざるをえない

ムーギー:いやいやこんにちは。見ず知らずのグローバルエリートにインタビューの時間をくださってありがとう。おまけに買い方のわかっていない私にランチまでごちそうしていただいて。

王さん:いやいやどういたしまして。で、何が聞きたいんだ?

ムーギー:ズバリ、中国経済の現状に関して、金融のプロであり、中国ローカルマーケットをわかっており、欧米の金融機関で経験を積んできた身から感じる問題意識を教えてほしい。

今、海外の新聞では中国経済崩壊論が面白おかしく書き立てられていて、本当の姿が見えていない気がする。中国語を話せず、中国に住んだことも仕事をしたこともない人が、ついでに経済と金融をまともに学んだことないのに“中国憎し”で適当なことをわーわー言っている現状に鋭くメスを入れたい。

王さん:中国経済崩壊論は、一部同意するが、同時に間違っているところも多い。まず成長率が落ちたとはいえまだ6~8%で成長しており、これだけの経済規模でこの速度で成長している経済が、ほかのどこにあるだろうか。海外機関投資家も中国経済が鈍化してきた、とわーわー言いつつも、結局、投資を続けている。やはりこのサイズとこの成長率だと、世界的なファンドマネジャーは投資しないわけにはいかない。

ムーギー:日本ではよくシャドーバンキングの問題が取りざたされているが。

王さん:中国の金融機関と、金融以外の分野で不良債権が多いのは誰でも知っている。ただ欧米や日本の不良債権処理から学び、当局は早めに介入したし、不動産投資も随分抑えられている。いちばん大切なのは、貧しい一般庶民に経済的な大ダメージがないかぎり、中国経済は大丈夫だということだ。一部の金持ちは資産価格の低下で打撃を受けるが、大半の中所得者・低所得者はそのような高額のマンションを持っていない。上海の地価は短期間で高騰したが、金儲けしたのは台湾と香港から来た人たちだ。値段が下がっても別に庶民の家計への直接的な打撃は大きくない。政府がいちばん恐れるのは、人口の大多数を占める中低所得者層の生活が不安定になることだ。

中国は、クレジットレーティングに意味がない?

ムーギー:とはいっても中国金融に問題があるのは確かだが、欧米の投資銀行でクレジットとエクイティの両方を分析してきた身で実感する問題点は何か?

王さん:それはひとえに、クレジットレーティングが意味をなさないことだ。つまり中国政府は本来、潰さなければならない国有企業とかを潰さず、そのまま融資を続けさせている。中国政府は金融機関に絶大な影響力を持っており、金融機関は共産党の大きな意向に反することはできない。だからAAAだろうがBBだろうが、皆、ジャンキーなボンドを買おうとする。というのも、どうせ潰れないならクレジットスプレッドの取れる債権を買ったほうがうまみがあるからだ。

ムーギー:なるほど、淘汰されるべき企業が時の政治家の都合で潰せず、不良債権が雪だるま式に増えていく――なんかどこかの国で行われた、仮名(仮名)さん肝いりの中小企業金融の某法案(別名不良債権拡大法案)と似たようなもので、どこの国でも政治が金融と市場を歪めるのは宿命みたいなものなのだな。

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