日本で「シャンパン」出荷量が激増した必然 2人のフランス人がブームに火をつけた

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「シャンパンの魅力が働くには全体的な雰囲気が重要です。第二次世界大戦後のフランスで、私がモエ・エ・シャンドンの若手社員だったころ、上司は私たちに無理やりレストランでボトルを注文させました。ウェイターがボトルを運んでくる姿が、レストランの客の心の消費欲を掻き立てるからです。香港の高級ホテル、マンダリンオリエンタルのバー『マン ワー』では、シャンパンはキャビア少々と一緒に提供されていました」とギユパンは振り返る。

今日ではコニャックとシャンパンはしばしば互いに競合しているように見られている。後発のシャンパンがもともとコニャックを屈服させたと言われているのだ。

だが、この変革の立役者たちはこれに異を唱えている。「シャンパンはコニャックの販売会社によって作られた、問屋やバーや消費者への販売経路から恩恵を受けました。コニャックの元々の働きがなければ、シャンパンの成功はなかったでしょう」とベナールは言う。

日本酒も世界で大成功する余地がある

とはいえ、コニャックの消費量がシャンパンの消費量が増えるにつれて減少していることには疑問の余地がない。2017年に日本では2万3013ヘクトリットルのコニャックが飲まれた。1989年には16万8819ヘクトリットル飲まれていた。つまり86%の減少だ。

日本におけるシャンパンの成功は、日本人の好奇心の高さや日本におけるマーケティングの重要性を証明している。また、日本のアルコール業界への教訓にも満ちている。つまり、日本のビールやワイン、日本酒会社や醸造家が、外国の顧客をより深く理解しようとすれば、世界的に成功する余地が大いにあるということだ。シャンパン業界が日本を理解したように。

今日、日本酒は復調しているかのように見える。だが事実は、日本の伝統的な酒はひどい衰退をたどっている。日本酒の生産量と販売量は20年で半減した。輸出額は滑稽なほどだ。ワインと比べるのは特に残酷である。2014年には、フランスは価格にして日本酒の94倍のワインと31倍のシャンパンを輸出している。

しかし日本におけるシャンパンの成功例は、消費者が望むものを理解するならば、どんな消費者にも製品のよさを知らしめることができるということを物語っている。これからでも日本酒メーカーが、真剣にこの努力をするのなら、成功を収められるのである。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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