スマホが脳の発達に与える無視できない影響 脳トレの川島教授が2つの実験結果から分析

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(筆者撮影)

実験では、被験者のスマホを座っているいすの後ろに置き、作業中にスマホを見たり触ったりすることは禁止する。そして、人工的にインスタントメッセンジャーのメッセージが入ったときに鳴る通知音(「ピコピコン、という例の音だ」)、もしくは目覚ましに使うアラーム音を時々鳴らす。画面をみて作業をしている最中に、後ろで自分のスマホからピコピコン、もしくはビー・ビーと音がするのだ。その音が鳴っているときには作業のパフォーマンスはどうなっているか、様子を観察してみた。

(注)ーー*は「統計的に有為な差がある」という意味を表す(出所)筆者研究データを基に筆者作成

結果、インスタントメッセンジャーの通知音が聞こえたときには、単なるアラーム音が鳴ったときと比べて有意にボタン押しの速度が遅くなり、速度も一定にならないことが判明した。

音が聞こえているという点では同じだが、前者の場合はグループの友達からメッセージが入ったことがわかり、相当に気が散ってしまい、これほど単純な作業であっても集中して継続できなくなってしまったのだ。

ちなみに、同様の実験はアメリカでも行われており、その結果としても、「単にスマホが近くにあるというだけで注意力が散漫になる」ということが明らかになっている。こうした現象は「Brain Drain」―脳からの資源の流出―と定義され、注意が喚起されている。知らず知らずのうちに、脳のリソースがスマホに向けられてしまっているのだ。

インスタントメッセンジャーには要注意。勉強をするときには、自分の傍にスマホを置いてはいけないということがわかる。しかし、これはあくまでもインスタントメッセンジャーという1つのアプリに関する話だ。スマホ使用全般については何が言えるのか。そこで、もうひとつの実験結果を紹介しよう。

「調べもの」にスマホを使ったらどうなる?

一言で「スマホ使用」と言っても、その用途はさまざまだ。中でも、「調べもの」についてはLINEなどのインスタントメッセンジャーやゲームとは違い、直接日々の学習に応用できそうだし、脳もしっかりと働くのではないかと予想できる。

そこで、脳の中でも記憶や学習に深く関連した部位である前頭前野の活動を、スマホを使って調べものをしているときと、スマホを使わずに同じような調べものをしているときとで比較する実験を行ってみた。前頭前野の活動を測定するために使ったのは、超小型近赤外分光装置(NIRS)と呼ばれる装置である。

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