異動がイヤだと辞めちゃう若手社員の言い分 職場の20代は今いったい何を考えているのか

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また、グローバル化がいくところまでいった現在においてさえ、「海外で働きたくない」という人が6割を超えている(産業能率大学による最新調査)状況です。留学や旅行はしても、海外では働きたくないという人が過半数なのです。採用ページなどでグローバル展開をうたっている会社は多々ありますが、自分たちはそれがアピールのつもりでも、若手からすれば「えー、海外にいかなきゃいけないなら嫌だな」と逆効果。要は、若手は“自分が育ったところから、どこにも行きたくない”のです。まず、これが地域間異動や出身地以外の地域への配属への壁となる若手の思考です。

「やりたいこと」を捏造する若手たち

もうひとつの背景は、最近のキャリア教育や就活にあります。そこでは、我々オッサン世代をはじめとする大人たちが、口を開けば「君は何がやりたいの?」と問い続けます。若手は最初、その言葉に恐れをなします。というのも、そんなものは無いからです。これまで2万人の若手の面接をし、今でも日々相談を受けている私の感覚からすると、20代前半時点で「本気でやりたいこと」がすでに存在している人は1〜2割ではないでしょうか。逆に、もっとも多い悩みが「やりたいことがわかりません」です。

私は、「やりたいこと」は探すようなものではなく、「気がつけばそこにあるもの」だと思っているので、パッと考えて無いなら無いのでしょう。そして、それは決してネガティブではなく、あらゆるキャリアのチャンスにオープンな状態なのですから、それでいいのです。それなのに、大人が散々「何がしたい」と聞くので、何かなくてはいけないと真面目に考えた若手は、自分の志向を即席で作り、「僕はこれがやりたいのだ」と自己洗脳して、「捏造されたやりたいこと」を信じ込むのです。そんな若手が、意にそぐわぬ配属には抵抗するのは当然でしょう。

さて、現状や原因がわかったところで、どのような対処をすればよいでしょうか。働く場所、地域が変わる転勤については、正直、私もものすごく実効性のある解決策は持っていません。「付き合っている人がいるので、転勤は嫌です」とか、「友人と離れたくない」と主張する若手に、「遠距離になって気持ちが離れるなら、それは本物じゃないのでは」「LINEとかでいつでも話せるじゃないか」などと諭そうものなら、パワハラ扱いされるリスクがあります。

「地方に行けば、組織も市場も規模も小さいし、人手不足で何でもしなければいけないので、ひとつ上の仕事ができて成長するぞ」とか、「大都市よりも物価も安いしおカネがたまるぞ」とか、一部の人には魅力に思ってもらえるかもしれませんが、それ以上に「どこにも行きたくない」と考える人の方が多いことでしょう。

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