「国民民主党」先祖返り、小池都知事も「無念」 「改革保守」捨て「中道・左派連携」に活路か

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新党結成は、地方組織や党資金維持のため民進党が「国民民主党」に党名変更し、希望の党の民進出身者が合流する手続きをとる。このため、一連の手続き終了後に「国民民主党」が正式発足する段取り。9月に予定される国民民主党の代表選で新代表と新執行部を選出するまでは暫定体制で国会対応や選挙対策を進めることになる。また、新党の通称は「国民党」とし、国政選挙での略称は「国民」となる見通し。

午後1時すぎから始まった設立大会には参加国会議員と地方議員が結集し、「政権交代可能な野党再編の歴史的スタート」との掛け声で議事が進んだ。共同代表就任が承認された大塚、玉木両氏はどちらも黒いスーツに赤いネクタイ姿で壇上に上がり「我々には国民に政権選択の機会を提供する義務がある」(大塚氏)「政権交代の中軸になるとの矜持を持ち、堂々たるゼロからの出発」(玉木氏)などと拳を振り上げた。さらに玉木氏は「新党の最優先課題は選挙、まず選挙に強い集団になる」と檄を飛ばす一方、「政策を磨き、『こんな国会論戦はみたことがない』といわれるような新しい政党の姿を目指す」と国会での審議拒否には慎重姿勢を示した。

「保守2党制」の困難さ浮き彫り

昨年9月下旬、当時は飛ぶ鳥落とす勢いだった小池百合子東京都知事が、自ら「希望の党」と書いたボードを掲げて新党結成を宣言した際は、国民の期待も一気に盛り上がった。しかし、衆院選前の民進党の新党合流を巡る小池氏の「排除発言」などのゴタゴタで、あっという間に「希望」が「失望」に変わり、選挙結果は自民圧勝となった。希望の党は野党勢力としても、枝野幸男元官房長官ら「排除組」が急きょ結党した立憲民主党の後塵を拝する結果となり、小池氏らが目指した「改革保守による保守2党制」の困難さを浮き彫りにした。

あれは何だったのか(撮影:尾形文繁)

今回の国民民主党旗揚げは「絶望からの再出発」(希望幹部)ともなるが、新党結成の過程で「改革保守」の理念を消し、「中道改革」に変えた。大塚氏は設立大会で「中道とは単に真ん中という意味ではない。思考の作法で民主主義そのもの」と力説したが、基本政策などをみると憲法改正や安保防衛政策でも民進党時代への「先祖帰り」の色彩が濃く、保守系議員が離脱する理由となった。「希望の党」の創業者なのに、新党から排除される格好となった小池氏は「このような結果は大変残念」と無念さをにじませた。

旧民主党の政権からの転落からすでに5年半、強大な自民党に対抗する「もう一つの保守党」づくりの挫折が、今回の国民民主党結成の背景にある。小池氏は去り、「脱民主党」による政界再編を目指した前原誠司、細野豪志、長島昭久各氏ら保守系有力議員は、それぞれ新党の一兵卒や孤独な無所属議員として、中央政界の片隅に追いやられた。その一方で岡田氏ら「立憲抜きの新党」に反対した民進系議員の多くは、地域政党を立ちあげる一方で、国会では引き続き「無所属グループ」としてさらなる野党再編を追い求める構えだ。

国民民主党の共同代表に就任した大塚、玉木氏の任期は9月末までと決まった。同党は9月下旬の自民党総裁選と並行して代表選を実施し、新たなリーダーと本格的な執行部体制を決めることになる。ただ、新党の参加メンバーをみる限り、知名度と実績がある多くの大物議員の離脱で、有力な代表候補は見当たらない。このため、9月の代表選で大塚氏と玉木氏が競うことになれば「何の新味もなく、国政選挙での党勢拡大も困難になる」(希望の党中堅)との不満が拡大しかねない。

一方、今国会中に首相が「電撃解散」に打って出れば、その時点で立憲民主などとの「統一候補」の擁立を迫られる。「背に腹は代えられない」と現職議員が競合する選挙区で候補者調整に乗り出せば党内混乱を引き起こし、結果次第では、またまた離合集散のドタバタ劇を演じかねない。

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