なぜ、世界でバブルが何度も起きるのか 高リスクの投資が行われる背景にあるものとは?

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08年に起きたリーマンショックでは、日本でも多くの人々が職を失った(撮影:風間 仁一郎)

2000年代になってから、世界はバブルを何度も経験した。なぜこうなったのだろうか? その背景を分析しよう。以下では、「長期金利が低下したため、高利回りを求めてリスクの高い投資を行わざるをえず、それがバブルを引き起こした」という考えを述べたい。

米国10年国債の利回りの推移は、図のとおりだ。1980年代の初めまではほぼ継続的に上昇し、年平均値は81年に13.9%のピークになった。しかし、その後は下落した。とくに80年代後半の下落が顕著だ。91年には7.9%になった。その後もほぼ継続的に低下した。90年代後半に5~6%になり、00年代にはさらに低下し4%台となった。08年からは4%を割り込んでいる。

この結果、年金基金や退職金基金、そして財団などは、80~90年代に比べて、基金運用利回りの低下に直面することとなった。

物価上昇率や賃金上昇率も低下しているので、支出の増加率も低下している。しかし、支出額や賃金支払額は、金利の下落ほどには低下しない。最近の金利は、90年代の初めに比べて半分、または3分の1程度になった。しかし、物価や賃金は、上昇率は低下したものの、上昇は続いているのだ。この意味で、ストックとフローの齟齬が生じている。

こうした事情があるので、高利回りを求めざるをえなくなる。従来のように国債に投資していればよいというわけにはいかない。

日本では厚生年金基金の運用に関連して、AIJ投資顧問などによる一連の問題が表面化した。虚偽記載などが問題であるのは言うまでもない。しかし問題の基本は、高度成長時代に設定した予定利回りが現実的でなくなったということだ。これに目をつぶると、本質が見えなくなる。

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