アルコールは百薬の長どころか「万病の元」だ 宴会前に押さえておくべき飲酒リスクの恐怖

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習慣とは恐ろしいもので、仕事を終えて片づけが済んだ後、ほっと一息つくために始めたものの、気付けば休日も含めて毎日飲んでいたという。聞けば、アルコールが好きなわけではなく、気持ちを切り替えるために飲んでいるとのことだった。

そこで、仕事中に気分を切り替え、かつ体が固くなるのを防ぐために、簡単なストレッチング(1回3分程度)を1~2時間ごとに行うことと、ビールをノンアルコールのものに替え、つまみも少なめにするように指導し、2カ月後に再診に来るよう伝えた。

再診に訪れた男性は診察室に入ってくるなり、満面の笑みを浮かべて開口一番こう言った。

「先生、とても楽になりました。膝や腰の痛みもそうなんですが、体中が楽になりました。朝起きたとき、こんなにすがすがしく感じられるのは久しぶりです!」

酒は…されど万病の元

男性はノンアルコールビールに替えて、つまみもほとんど食べなくなった。体重も2カ月間で7キロ減り、熟睡できるようになったという。男性自身には熟睡できていないという自覚はなかったが、熟睡できるようになった今では以前の眠りが浅かったと感じているそうだ。

健康に対する男性の意識は向上し、3回目の診察時には「もう少しやせたい」と希望した。筆者は漢方薬の処方以外は何もせず、男性はその後ほぼ完全に体が痛まなくなったという。

この男性に限らず、酒を減らしたりやめたりするだけで、「熟睡できるようになった」「全体的に体調が良くなった」と話す患者さんがたくさんいる。

「酒は百薬の長」とよく言われるが、その後に「されど万病の元」と続くのはあまり知られていないようだ。

北原 雅樹 ペインクリニック専門医、麻酔科医

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きたはら まさき / Masaki Kitahara

横浜市立大学附属市民総合医療センター ペインクリニック診療教授。1987年東京大学医学部卒業。1991〜96年、世界で初めて設立された痛み治療センター、ワシントン州立ワシントン大学ペインセンターに留学。帝京大学溝口病院麻酔科講師、東京慈恵会医科大学ペインクリニック診療部長、麻酔科准教授を経て、2017年4月から横浜市立大学附属市民総合医療センター。2018年4月現職。専門は難治性慢性疼痛の治療。

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