上野動物園、知られざる動物たちの「お値段」 サイは3000万円、カバ、キリン、ライオンは?

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こうした動物の価格はどう決められているのか。

東京都によれば、動物の入手方法は、野生で採取したり、交配によって子どもが生まれる、外部から購入・贈与・寄附、そしてほかの動物園と交換するといった手法がある。

上野動物園を管理する東部緑地公園事務所によれば「物品管理の規則上、100万円以上の物を『重要物品』として管理している」という。

通常、重要物品に関しては減価償却をするが、動物では行なっていない。そのため基本的には、購入価格がほぼ現在の価格(残存価格)となっている。身もふたもないが、動物が亡くなると除却するそうだ。

例えば、アフリカゾウのアコやアジアゾウはアヌーラの価格が、最近きたゾウに比べて安いのは、かなり古い時期、まだ動物が安かったり貨幣価値が違う頃に取得されたことが理由だ。

一方のゴールデンターキンは2003年~2017年に8頭を1500万円で、2013年に2頭を2199万円で取得するなど、時期に関係ない価格となっている。「取得時期やタイミング、血統、オスかメスかで値段が異なる」(協会)と説明する。

100万円以下の動物は”点数”だけ管理

もうひとつ気になるのは、リストにある以外の動物の価格はどうなっているのかということ。

このリストに入っていないニホンザルやフラミンゴなど100万円以下のものは「『動物台帳』において点数のみの管理となっている」(東部公園緑地事務所)。つまり、100万円以下で取得した動物については価格がないことになる。

この価格を専門家はどう見るのか。『動物のお値段』などの著書があり、動物の売買を専門とする白輪剛史氏は「今の国際相場からすると、10分の1ぐらいの水準だ」と話す。

実際、IUCNのレッドリストで絶滅危惧ⅠA類に指定され、世界に4200頭が生存するに過ぎないとされるクロサイの値段が400~450万円というのは、2位のインドサイ(3000万円)に比べて割安すぎる印象だ。

また希少な大型のオウムやインコが数百万円で取引されるものもある中で、“動かない鳥”として人気をあつめるハシビロコウが125万円というのは意外な値段といえるかもしれない。

数年前に人気を集めたレッサーパンダが150~200万円するのに対し、カバの120万円、スマトラトラの150万円と、やや低めの価格設定になっている。

もうひとつ白輪氏が指摘するのは、日本の動物園の実態だ。予算が限られる日本の動物園は新たな動物を購入しようとしても、「おカネを持っている新興国の動物園に買い負けしている」(同氏)。

そこで「予算がないから、動物を集めて自分のところで(交配によって)増やし、ほかの動物園と交換する原資にしている。それが表れたリストだ」(白輪氏)という。

確かにリストにはチンパンジーが20頭、チーターが25頭、ゴールデンターキンが10頭と記載されている。協会は2016年度の活動報告書で「希少動物のチーターやゴールデンターキンの繁殖に力を注いでいる」と説明していることから、こうしたほかの動物園と交換したり、レンタルに出すために数多く保有している可能性が高そうだ。

価格はあくまで東京都の資産として登録されている簿価であり、実際の売買価格とは違う。個人が入手不可能な動物が多いだけでなく、動物園同士が交換に使うにしても「こんな安い価格で交換するのはとても無理」(白輪氏)という。

とはいえ、「動物園の多くは税金で運営されている。適切に税金が使われているか知るにはよいではないか」(白輪氏)。この春に、上野動物園に行った際には動物たちの新たな一面が見つかるかもしれない。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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