「嵐」のせいにして選挙を先延ばしにする自民の魂胆

「嵐」のせいにして選挙を先延ばしにする自民の魂胆

塩田潮

 麻生首相は解散よりも経済・景気対策重視の姿勢を変えていない。
 世界的な金融不安と実体経済への悪影響が深刻なのは間違いない。政権担当者が危機回避を最重要課題と位置づけるのは当然である。だが、一皮めくると、支持率低調、国交相交代、選挙調査による劣勢判明などで解散忌避症が募っているときに経済急変という嵐が襲い、嵐のせいにして総選挙を先延ばしにしようとする首相と自民党の魂胆が透けて見える。

 であれば、景気対策最優先の首相の狙いは何か。自前の経済政策で景気悪化阻止または経済好転となれば支持率上昇、劣勢挽回もと算盤を弾き、「景気対策こそ最大の総選挙対策」と考えているのだろう。
 長年の与党暮らしで「景気対策ができるのは自民党だけ」「不況に強い自民党」という思い込みが自民党にはある。不況時には有権者は景気対策のノーハウの蓄積がある自民党に政権を託そうとするという見方もあるが、本当にそうか。

 1990年以降の6回の総選挙と景気の関係を調べてみた(括弧内は、首相名・景気の状態・自民党の勝ち負け)。90年(海部・バブルのピーク直後・勝利)、93年(宮沢・バブル後の最悪期・敗北)、96年(橋本・景気回復期・辛勝)、2000年(森・景気回復期・敗北)、03年(小泉・どん底脱出直後・辛勝)、05年(小泉・踊り場脱却・大勝)。

 もちろん勝敗は景気だけで決まるわけではないが、どちらかといえば、経済好調時は好成績で、不況または不況脱出中の時期は苦戦である。従来型の自民党流不況対策への期待が薄れているのも理由の一つだが、むしろ構造問題の放置など経済悪化を招いた政府・与党への不信感が苦戦の原因と見られる。
 麻生首相も「経済・景気対策が重要」と唱えるだけでなく、不信感払拭の青写真と処方箋を提示しなければ、同じ轍を踏む可能性がある。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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