東横イン「12年前の失態」から遂げた大変身 車いす利用者が格段に使いやすいホテルに

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「東横インが車いす生活者に優しい? 本当?」と疑問を差し挟んだり、意外に思ったりする人がひょっとするといるかもしれない。東横インは今から12年前、当時のハートビル法に基づく行政によるバリアフリールームの検査の後、届出とは違う改造を行い、問題となったことがあるからだ。

蒸し返してしまって恐縮だが、当時の問題についての報道を振り返ると、東横イン側は記者会見で、「障害者用の客室をつくっても、年に1人か2人しか泊まりに来ないので倉庫にしている」「制限速度60キロのところを65キロで走ったようなもの」などとコメント。世間からのバッシングを受けた。

ところが、今の東横インは車いす利用者から見て、かなり利用しやすい宿泊施設に変貌している。私自身、2011年に車いす利用者の友人から勧められて東横インに泊まるまでは半信半疑だったが、実際に泊まってみると数多く泊まったホテルの中でいちばん利用しやすいホテルだった。それ以来、全国各地の旅行に行く場合は、真っ先に東横インを候補に入れている。

東横インでは国内の約85%以上を占める229施設(2018年1月調べ)において「ハートフルルーム」と呼ぶ、バリアフリールームが設置されている。間取りは「A」「B」の2つ。Aはシングルルーム、Bはツインルームになっている。1人の場合でもツインルームを利用できる。

ハートフルルームAとBはホームページにも間取り・画像が公開されている点は、安心だ。なぜなら全国にある宿泊施設の大半がこうした情報の「見える化」には至っていないだけでなく、バリアフリールームの有無においてもホームページや旅行サイトには掲載されていない。ハンディキャップをもっている旅行者にとっては、各宿泊施設に電話でいちいちバリアフリールームの有無を問い合わせなければならないことがとても面倒なのが一般的である。

車いす利用者にとって助かる備品

ハートフルルームには入浴用いす、滑り止めマット、浴槽内チェアーなど車いす利用者にとって助かる備品がそろっている。立位・歩行が難しい人を対象として、浴槽に入る前に乗り移れる台も設置されている。この台があることで車いすから台に乗り移ることができて浴槽に入ることが可能になる。

こういった台を設置されている宿泊施設は、全国の宿泊施設においても限られるほどしかない。乗り移る台がなければ浴槽に入ろうとした際、もしバランスを崩したら事故につながると思ってためらってしまう。しかもシャワーチェアーが用意されていないバリアフリールームであったりすると、シャワーすら浴びることもできない車いす利用者もいる。

こうなると単なる広いだけの部屋であり、何のために高いおカネを払って宿泊したのかわからない。料金の高い宿泊施設が使い勝手に問題があって、逆にリーズナブルな価格の東横インが使い勝手がよいという逆転現象まで生まれている。

東横インでは、車いすの駐車スペースについても、ハートフルルームの設置しているホテルにおいては1台分の身障者用駐車スペースをホテルの目の前に確保してくれる点もありがたい。(事前連絡は必要)。

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