まるでSF!凄すぎる進化を遂げる「人体拡張」 パラリンピックがオリンピックを上回る日

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義肢は、障がい者の活動レベルを健常者に近づけるものから、健常者を超えるものへと進化しつつある(写真:MichaelSvoboda / iStock)
わずか数年で普及したスマートフォンが、消費者の情報行動や消費行動を変革したことで、新しい企業が続々と登場して急成長する一方、さまざまな既存の業界がディスラプションに直面している。
環境変化の中でテクノロジーの進化は群を抜いて速く、その進化は、医療、労働、教育、都市のあり方を変え、個人、組織、政府の行動に影響を与えている。
これから起こるテクノロジーによる破壊と創造について喝破したブレット・キング著『拡張の世紀』(東洋経済新報社)は、中国の習近平も読んだことで話題となった。本書を翻訳したNTTデータ経営研究所の上野博氏に、テクノロジーによる破壊と創造の1つ、「人体の拡張」について話を聞いた。

伝説的なアニメ映画「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」では、身体パーツの人工物への置換が「義体化」として描かれているが、今、テクノロジーはそれが早晩現実となりそうな方向へと向かいつつある。

オスカー・ピストリウスを覚えておいでだろうか? 南アフリカ出身の陸上選手で、先天性障害のため生後11カ月で両脚をひざ下で切断したが、2012年のロンドン・オリンピックに、両脚に義足をつけて健常者と共に出場した。その義足の形から、彼は「ブレード・ランナー」と呼ばれた。

健常者に対して「アンフェアな優位性」をもたらす

ピストリウスはそれ以前からパラリンピックで活躍しており、健常者の大会に出場しようとしていたが、世界陸上連盟は2008年の北京オリンピックへの参加を却下している。理由は、彼の義足が健常者に対して「アンフェアな優位性をもたらす」可能性があるというものだった。

『拡張の世紀―テクノロジーによる破壊と創造』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

当時のピストリウスの義足はシンプルな炭素繊維製であった。しかし現在の義肢は、素材、センサー、コンピューティング、エンジニアリングといったテクノロジーの急速な進歩によって、当時よりもはるかに高性能になっている。

先進的な例としてヒュー・ハーを挙げよう。ハーは米国を代表する若手登山家であったが、登山中の事故で、ピストリウスと同様にひざ下から両脚を失った。

しかしその後彼はMITで機械工学修士を、次いでハーバード大学で生物物理学のPh.D.を取得し、その知識と技術を総動員して義足を開発した。

次ページ登山に特化した義足も開発
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