JR各社をまたぐ運賃「通算制度」はここが変だ 乗り継ぎか「自社内」かで1000円以上の矛盾も

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筆者の解釈は次のとおりだ。まずは旅客が新幹線と在来線の特急列車とを乗り継いで乗車した営業キロに対する新幹線の乗車キロの比を求め、割り引かれた金額の負担割合を決める。次に旅客が乗車した新幹線に関連するJR旅客会社が複数存在する場合は、乗車した営業キロに応じてさらに分配するというものだ。

以上の方法で、割り引かれた1450円の各社の負担額を求めてみたい。旅客が新幹線と在来線の特急列車とを乗り継いで乗車した営業キロとは東京→松山の947.3km。うち新幹線の乗車キロは東京→岡山の732.9kmで、77.4%となる。

したがって、割り引かれた1450円のうち、1122円(77.4%、1円未満の端数は四捨五入)は東海道、山陽新幹線の営業主体であるJR東海とJR西日本とが負担するのであろう。先ほどの東京→岡山の分配率(JR東海75.4%、JR西日本24.6%)を用いると、1122円の負担額はJR東海が846円、JR西日本が276円だ。

特急「しおかぜ」の営業を行っている側は1122円を受け取ることとなるので、その分配額も求めてみよう。これも先に示した分配率(JR西日本13.0%、JR四国87.0%)からJR西日本は146円、JR四国は976円となる。この結果、「しおかぜ」の特急料金の収入はJR西日本が189円に146円を足して335円、JR四国は1261円に976円を足して2237円だ。

ただし、JR西日本は新たに276円を負担しなければならないので、全体としての分配額は差し引き130円の減少となる。

乗り継ぎだと大減収に…

いままで述べた新宿→松山の運賃と料金との分配額を表にまとめてみた。JR四国の収入は運賃が2598円、料金が2237円の計4835円と考えられる。今回の経路のうち、仮に旅客がJR四国内で完結する児島―松山間だけに乗車した場合の同社の収入は運賃3610円、料金2680円の計6290円であり、乗り継ぎだと実に1455円の減収となってしまう。

国鉄の分割民営化プランを作成した日本国有鉄道再建監理委員会(委員長は亀井正夫・住友電機工業会長)によると、「北海道、四国、九州の3島については、旅客流動の地域内完結度が95%~99%とこれも極めて高い」(「国鉄改革に対する意見」、1985年7月より)とあるから、JR四国にとって大きな影響は生じていないのかもしれない。とはいえ、本四備讃線を介した岡山県と香川県との間だけでも2015年度の輸送人員は393万人(「平成27年度旅客地域流動調査」より)と、同年度のJR四国の輸送人員である4612万人に占める比率は8.5%に達する。

ご存じのように同社の経営状況は厳しく、2015年度に鉄道事業で109億円もの損失を計上した。損失を補填するために用いられる経営安定基金の運用益の多くを事実上税金で支援しているとなると、こと同社に関しては国鉄から引き継いだ通算制の運賃、料金がふさわしいのかどうかは何とも言えない。

梅原 淳 鉄道ジャーナリスト

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うめはら じゅん / Jun Umehara

1965年生まれ。三井銀行(現・三井住友銀行)、月刊『鉄道ファン』編集部などを経て、2000年に独立。著書多数。

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