カーリング娘の会話術がこんなにも深い理由 カワイイ「そだねー」だけじゃない信頼と結果

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LS北見が平昌五輪に出場した10チーム中9位のショット成功率にもかかわらず銅メダルを獲得できたのは、他チーム以上に細かい確認作業を重ねながら、難易度の高い戦略を実行していたから。同様に、ビジネスシーンでも難易度の高い仕事に挑むときは、朝夕や毎週などの確認をおろそかにしないことが重要ではないでしょうか。

最年少・吉田夕梨花が見せた頼もしさ

ここまでポジティブな会話ばかり挙げてきましたが、2月23日に行われた準決勝の韓国戦で、唯一の例外がありました。「最終10エンド、スコアは日本6―7韓国で、しかも有利な後攻は韓国」という敗戦濃厚な状況だったのです。

しかし、決してあきらめない日本チームは、藤澤さんが「最後のショットまでいい形ができたので、『相手に決められたら拍手だろうな』という気持ちだった」と語ったように、韓国にプレッシャーがかかる状況をつくりました。

ただ、そこは韓国チームのスキップ「メガネ先輩」ことキム・ウンジョン選手。絶妙なラストショットが決まり、「負けた」と思った藤澤さんは韓国のストーンを外に出すスイープをしませんでした。ところが韓国のストーンは予想以上に外へ滑り、日本が1点を獲得して延長戦突入が決定。まさかの展開に、藤澤さんは笑いが止まりませんでした。

そこで、すぐさま「集中して!」と注意したのは、最年少の夕梨花さん。藤澤さんに「最後まであきらめないで、ちゃんとスイープしてよ」と言いたかったのです。試合後に藤澤さんは、「私も知那(美)も(負けたと思って)ボーッとしていて、はくのを忘れていました。『すみません』という感じで」と平謝りしていました。

夕梨花さんの「集中して!」は、藤澤さんを否定したいわけではなく、延長戦に向けて「ステイポジティブ」を保つための言葉だったのでしょう。「年齢の上下にかかわらず、チームとして必要なことは伝える」という姿勢には頼もしさを感じますし、ここまで積み重ねてきたチームマネジメントの賜物とも言えます。藤澤さんが引きずることなく、延長戦も韓国にプレッシャーをかけ続けられたのも、夕梨花さんのおかげではないでしょうか。

最後は、どちらに転ぶかわからない緊迫した状況の中、メガネ先輩がさすがのショットを決めて、日本7―8で韓国が勝利。藤澤さんは悔しさをあらわにしながらも、「相当プレッシャーがかかる場面だったので、決めた選手を拍手したいです」と潔く敗戦を受け止めました。ここでもステイポジティブを実践していましたし、だからこそ翌日の3位決定戦に気持ちを切り替えられたのでしょう。

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