外国人が熱狂する「田舎では普通の光景」7選 「当たり前のもの」こそ観光資源になる

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その⑦「この町のクルマはすべて電気自動車!?」静かすぎる町の様子

この問いかけは、飛騨古川に宿泊したイタリア人から発せられたものである。真意を問うと「昨夜から何一つ音がしない。クルマの往来の音すら聞こえない」とのこと。

人口が減り続ける地方部においては、確かに夜になると静けさが町を覆う。その静けさが外国人にとっても魅力となるという話だ。冷静に考えると、各国より日本旅行を実現するにはそれなりの費用が必要で、そうした費用を稼ぎ出せる所得の持ち主の多くは自国の都市部に住んでいるだろうから、静けさそのものが価値になるわけである。静けさに加え、明かりの少ない静かな街の、星の広がる夜空も立派な価値となることは言うまでもない。

日本の田園に外国人観光客の歓声が飛びかう(写真:SATOYAMA EXPERIENCE)

日本を訪れる外国人旅行者が年間3000万人に迫り、観光スポットに行ってはみたものの周りは自分と同じ外国人旅行者だらけ、などという体験を持つ旅慣れた旅行者には、外国人が少ない地方部を訪れたときの「外国人は私たちだけ」という感覚も、他人と違うことをよしとする類の人々にとっては、これまた、少なからず彼らにとってはかけがえのない価値になるようである。

日本の全ての田舎はクールになれる可能性を秘めている

『外国人が熱狂するクールな田舎の作り方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「なんもない……からクールな田舎へ」とは、私たちが事業開始当初に掲げたスローガンである。海外で暮らした経験を持ち、かつこの地に生まれていない移住者である私たちから見た飛騨エリアは、宝箱といってもよい魅力を有していると感じる。飛騨のような田舎が外国人に喜ばれることはある程度想像していたが、日本社会のさまざまなありふれた日常が、自分たちの想像以上に興味の対象になっていることに驚きと楽しさを感じている。

田舎らしさ、日本らしさだけでも外国人の興味の対象となりうることは、すでに外国人が多く訪れている飛騨エリアに限らず、日本のどの地域でも同じ取り組みが可能であることを示唆していると言えるのではないだろうか。

このような10年近くの私たちの蓄積を参考として、自らの地域の存続にかけて動く人々が1人でも増え、地方部での新たなチャレンジが目に見えてくることを切に願う。

山田 拓 「美ら地球(ちゅらぼし)」代表取締役

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やまだ たく / Taku Yamada

外資系コンサルティング会社を退職し、足かけ2年にわたる世界のツーリズムを学ぶ旅を経て、飛騨古川に移住。「里山からSATOYAMAへ」を掲げ、イナカを巡る外国人向けプラットフォームSATOYAMA EXPERIENCEをはじめ、民家などの地域資源を活用したグローバルマーケットを視野に入れた数々の地域再生ソリューションをプロデュース。

2013年、地域づくり総務大臣表彰にて個人表彰を受けるほか、グッドデザイン賞、環境大臣賞など、多方面からの評価を受ける。近年は古民家をオフィス用途に転用した「里山オフィスプロジェクト」にも着手。創業後も年に一度の海外への旅は欠かさない。奈良県生まれ、株式会社美ら地球(ちゅらぼし)CEO。 総務省地域力創造アドバイザー、内閣官房クールジャパン・地域プロデューサー

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