共働き「ブラックボックス家計」が危険な理由 同居しているのに相手の年収も貯金額も「謎」

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まず1つには、「自分で稼いだおカネは自分のもの」という意識があります。そのとおりかもしれません。しかし、おカネを使うことに抵抗がない場合が多いので、楽しく浪費をしてしまいがちです。

「来月はあれを買おう!」「ボーナスが出たら思い切ってこれも買おう!」というわけです。消費はもちろん悪いことではありませんので、大いに使って頂きたいのですが、自由に使えるのは、毎月の必要貯蓄額を取り分けた後のおカネと考えるべきです。

2つ目に「ダブルインカム」なので、「何かあってもとりあえずはどうにかなる」という安心感もあり、「おカネを貯めなくてはいけない」と意識が薄れてしまうことです。貯蓄額の目標を立てていたとしても、甘くなってしまいます。

しかし、そういうご夫婦ほど、一方では家計として将来の見通しを十分に立てていないため、「なんとなく不安だ」という気持ちを抱いています。また、相手が何にいくら使っているのかがわからないので、何かあると相手への不審につながりやすく、それが積もればあらぬ誤解を生んだり、信用をなくすことにもなりかねません。このように「ブラックボックス家計」は、おカネに対し自由度が大きいように思いますが、こういう状況を生み出しやすいのです。夫婦関係も家計も最悪の場合、破たんということになりかねません。

「ガラス張り家計」は一見しんどいが…

対して、互いに収入や貯蓄額を把握している「ガラス張り家計」は、貯蓄のスピードが格段に上がります。なぜなら、共働き夫婦が結婚すれば、一般的に、収入は大きく増えても支出は2倍にはなりません。1人の時より余裕が生まれるはずです。その余裕を、支出してしまうのか、貯蓄に向けるのかでは、大きな差が生まれるのです。

では、今稼いだおカネのうち、どのくらいを未来のために移動すべきなのでしょう。

夫の和希さんとも丁寧にお話をして、2人で家計を改善することにしましたので、南條さんご夫婦の手取り年収を合算して、将来も安心して暮らすための「必要貯蓄率」を求めてみましょう。これからご結婚される方はもちろん、これまで、互いに秘密にしてきたというご家庭も、ぜひ考えてみてください。

人生設計の基本公式とは、ひと言でいえば老後(通常65歳)に「現役時代の何割の生活水準で暮らすか」(通常は7割)を決め、それまでに「手取り年収の何割を貯めるべきか」(=必要貯蓄率)を計算するものです。誰でも3分で計算できます。

計算の仕方は、過去の記事「あなたは65歳までにいくら貯めればいいのか」をご覧ください。初めての読者の方は、このままケーススタディを眺めつつ、読み進めてください。

次ページ「ブラックボックス」南條家は、いくら貯めるべきか?
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