「つい、したくなる」シカケのつくり方 無意識に「エコしちゃう」世の中を目指して

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大阪大学教授
松村真宏
大阪大学基礎工学部卒。東京大学大学院工学系研究科修了。博士(工学)。スタンフォード大学客員研究員などを経て、2017年より大阪大学教授。日本における「仕掛学」の第一人者。著書に「仕掛学 人を動かすアイデアのつくり方」など

「こちらはスイッチを消すと笑顔になるイラストを応用したものですが、色やビジュアルを応用することもできます。たとえば、赤色は人に「熱」や「危険」を連想させる色なので、スイッチをずっと入れていると、どんどん赤みが強くなるスイッチがあれば、消したくなると自然に思わせることができるでしょう」

また、仕掛学の考え方の元となっている行動経済学では、人は予想しにくい先の未来のことを言われてもなかなか行動しないが、今すぐ変化する未来については興味を持って即座に行動するということがわかっている。つまり、すぐ効果がわかるようなものを用意すれば、人は次第に行動を変える。その結果として、長期的な目標でも達成できるというのである。

楽しむことのできる目的を設定する

そのためにどうすればいいか。松村氏はこうアドバイスする。

「行動を変えるときは『トリガー(何らかの動作を開始するためのきっかけとなるもの)』が必要です。人は部屋に入ると、何も考えずに部屋の電気をつけ、テレビのスイッチを入れる。つまり、人は普段あまり考えずに同じ行動を繰り返しているのです。そうした日常生活の動線にトリガーを埋め込むことで、人は行動を変えるようになるのです」

無理やり「しなければ」と意識してしまっている以上は、行動に根付かせることはできない。それは、地球温暖化対策に関しても例外ではない。やりたいから行動していること、無意識に行動していること自体が、結果としてエコにつながることが理想だ。個人の行動において、「つい、やってしまう」ことにする工夫が必要だと松村氏は語る。

「『地球にいいことをしよう』と言っても、なかなかできないのが現実。行動を喚起するには、楽しむことのできる別の目的を設定することが有効です。たとえば、生活の中のエネルギーを使うシーンでタイムトライアルの要素を組み込んで、毎日1秒でも短くしていくようにするという風にゲーム化してもいい。無理強いされるものではなく、私たち一人ひとりが自然に楽しんでできる工夫を生活の中で実践していけば、多くの人が『つい、地球温暖化対策をしてしまう』世の中にすることができるでしょう」

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