2030年のCO2削減方法はこう変わる 爆笑問題×東大デザインラボが考察

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2030年度までに、温室効果ガス排出量を26%削減(※2013年度比)する目標を掲げる日本。持続可能な社会を実現するためにも、国民一人ひとりがこの目標を身近なこととして考え、未来のためのアクションを選択する「COOL CHOICE」が必要だ。そこで、人工知能「AI」と、身の周りのモノがインターネットにつながる「IoT」の技術を駆使し、最先端を知るクリエイターが集い、生まれたアイデアが未来のデバイス「BIoT(バイオーティー)」である。

バイオ×IoT技術で「自然の声」に耳を傾ける

高度かつスピーディーな情報処理を実現するAI、モノとインターネットがダイレクトにつながるIoT。近年、進化目覚ましいこれらのテクノロジーを地球温暖化対策のための国民運動「COOL CHOICE」に活かすべく誕生したのが、この「BIoT」プロジェクトだ。「BIoT」とは、バイオとIoTを組み合わせた造語である。現在、AIやIoTは家電や医療などの分野に続々と実装され、暮らしの向上に寄与しているが自然へのアプローチは道半ばとなっている。プロジェクトでめざしたのは、CO2削減の影響を受ける存在として、生活に密接している植物などの自然の情報を可視化すること。また、それによって促される、人間の意識と行動の変容だ。

主導したのは、東京大学生産技術研究所とデザイン思考で社会課題を解決するプロダクトデザインに習熟した英国の大学院大学、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)が共同設立した「RCA‐IIS Tokyo Design Lab」。

デザインラボを率いるマイルス・ペニントン教授や野城智也教授、今井公太郎教授、森下有助教をはじめとするメンバーが、ワークショップを通して生まれたアイデアを、最新の研究動向を踏まえながら、約1カ月にわたりブラッシュアップした。

自然界のインターネットに着目

今回のプロジェクトで着目したのが1989年に発見された、植物同士が共生するための情報網「ファンガルネットワーク」である。いわば、自然界に存在するインターネットともいえるもので、キノコなどの菌が樹木などの植物の根の表面や内部に糸状の根(菌根)を伸ばし、共生状態を維持している。このファンガルネットワークを通じて、子孫を根付かせるために効果的な栄養素の運搬をはじめ、地中に存在するリン酸や窒素を樹木や草花に提供する代わりに、それらの植物が光合成で生み出したエネルギーを受け取っていることが研究によって明らかになっている。2017年には、ネイチャー誌により、植物がリアルタイムで発している電子シグナルを計測したことが発表された。これまで独立した存在と考えられてきた植物が、シグナルを発しながら自然界でお互いに情報を交換し、生存しているという事実は、自然が発する声を汲み取る可能性にもつながる。

そこで、プロジェクトでは、ファンガルネットワークを利用して、植物の健康状態や息遣いをキャッチし、その情報を映し出すことで可視化するデバイス「BIoT」をコンセプトモデルとして開発した。建物の窓などに取り付けられた「BIoTデバイス」により、近隣の樹木がどのくらいCO2を消費しているのか、水分や栄養は足りているか、天候等によるストレスはないかなどを、常時モニタリングできるというものだ。

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BIoTが導く次世代の共生社会