米下院共和党が政府閉鎖でも妥協しない理由 米下院の多数派はティーパーティー(茶会)系議員

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10月1日、米下院共和党のほとんどの議員にとって、連邦政府機関の閉鎖よりも大きな危険は、その運営継続を目指して戦うことだ。写真はワシントンの連邦議会議事堂(2013年 ロイター/Larry Downing)

[ワシントン 1日 ロイター] - 米下院共和党のほとんどの議員にとって、政治的危険性という点で連邦政府機関閉鎖よりも大きなものがただ1つだけある。それは、政府機関の運営継続を目指して戦うことだ。

政府機関閉鎖は、共和党が来年の中間選挙で上院の多数派を奪還したり、2016年の大統領選挙に勝利する力を損なってしまいかねない。だが、暫定予算案と医療保険改革(オバマケア)の先送りをセットにして推進し続けている下院共和党議員にとって、そんな事態は知ったことではない。

ブルッキングス研究所の議会問題専門家、サラ・バインダー氏は「下院共和党には党の価値が傷つくことに痛手を感じない大きな集団が存在する」と述べた。

共和党が2010年の選挙で下院の多数派となったのは、保守主義の草の根運動であるティーパーティー(茶会)の支援があったからだ。

茶会系議員は全国的に出馬しているわけではないが、その地盤においては2010年の国勢調査結果を受けた慎重な選挙区割りの見直しと有権者の両極化が進んだおかげで、かつてないほど再選が安泰になっている。

クック政治リポートの見積もりでは、下院共和党議員232人のうち205人は来年の選挙で再選に向けて安全圏に入っており、なお情勢が伯仲しているのは11人にとどまる。

中道の有権者を取り込む必要が薄い一方、茶会系議員にとっては政府機関の運営を続けられる努力するよりも、引き続き茶会に忠実な保守主義の積極的な実践者だという証明を求められる圧力がずっと強まっている。

このため彼らとしては、オバマケアに強硬に反対しなかったと非難されるよりも、政府の資金が枯渇するのを許容する方がずっとたやすいのだろう。

かつて下院共和党指導部の側近を務めたケビン・マドン氏は「彼らにとっては選挙区に帰った際に、ホワイトハウスへの抗議として反対票を投じたという方が、なぜ賛成票を入れたかを弁明するよりずっと立場が良い」と語った。

<勝算見込めぬ闘い>

オバマケアと暫定予算を連結させる戦術を行使している共和党は、この闘いにおける勝算をほとんど見込めない状態にある。

30日に公表されたCNNテレビの世論調査では、対象の有権者の46%が政府機関閉鎖の責任は共和党にあると答え、オバマ大統領のせいだとした36%を上回った。また全体の3分の2が、オバマケアの阻止よりも政府機関を閉鎖しないようにする方が重要だとしている。

下院共和党議員が選挙で民主党の対立候補に敗北するよりも、右派の支持基盤から攻撃されることにより大きな不安を感じていることで、たとえ彼らの議席が確保されたとしても党自体の位置を中道からさらにかい離させてしまう。

ベテランの共和党員は、こうした流れが大統領選で2回連続敗北した同党が進める全国的に幅広い有権者にアピールしようという努力を損なう可能性があるとみている。

昨年下院議員を引退した共和党穏健派のスティーブ・ラトゥーレット氏は現在の事態について「共和党が予想可能な将来において下院を支配する地域政党としての地位を確保する上では明らかに追い風となる歩みだが、上院選挙と2016年の大統領選で盛り返す能力を低下させる」と指摘した。

皮肉なことに、茶会系議員の再選が確実になることで、党の重要政策課題を推進する力が落ちてきた。ベイナー下院議長は農業政策から増税問題に至るまで、共和党内を結束させることに苦労を重ねている。

ブルッキングス研究所のバインダー氏の分析によると、ベイナー議長の方針に一貫して異を唱えてきた議員の選挙区では、昨年の選挙におけるオバマ大統領の得票率は35%で、ベイナー氏をずっと支持してきた議員の選挙区ではそれが平均で43%だったという。

ベイナー氏は政府機関閉鎖問題でも党内をまとめきれていない。同氏は1995─96年の政府機関閉鎖で党がダメージを被ったことを肝に銘じて、各議員に対決を避けるよう促してきたが、その発言は重みを持っていない。大統領が拒否権発動を示唆しているにもかかわらず、下院共和党は3回にわたって、暫定予算とオバマケアを妨げる動きを抱き合わせた法案を可決した

ただ、今回の対決がどんな形で決着するにしても、数週間以内には連邦債務上限問題をめぐって再び闘いが繰り広げられることになる。共和党保守派議員は、オバマ大統領の前に立ちふさがる新たなチャンスを探っているからだ。

マドン氏は「今から来年の選挙までいくつかの政治的な危機が生じるだろう。今回はそれらの闘いの1つの局面にすぎない」と話した。

(Andy Sullivan記者)

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