毎日16時に「認知症の親」が徘徊する深い理由 「親になる前」の人生を含めた理解が重要だ

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この実話において、もし、伯父が16時の意味に気づかなかったらどうなったでしょう。認知症の周辺症状としての徘徊や暴力は、おそらく、消すことができなかったと思われます。優れた介護を実施するには、親の人生について、この細かさでの情報が必要になるわけです。可能であれば、認知症になる前に、そうしたことを親から直接聞けていると理想的です。

悲しいのは…

最も悲しいのは、親が死んでから、葬儀場で、親族から、知らなかった親の一面についての話を聞くことです。

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また、写真の整理をしていて、親の中学時代の集合写真などを見たとき、どれが自分の親なのかわからないということもとてもつらいものです。

自分という人間が生まれた背景には、どのような親の人生があったのか、できるだけ親が元気なうちに、聞いておくべきだと思います。

そこにはきっと、自分と同じことに悩み苦しんだり、また、同じことに喜んだ人生があるはずです。

これは単なる感情論ではなくて、介護離職を避け、周辺症状を上手におさえた、より優れた介護を実現するためにも必要なことなのです。

酒井 穣 株式会社リクシス 取締役副社長CSO

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さかい じょう / Joe Sakai

1972年、東京生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。Tilburg 大学 TIAS School for Business and Society 経営学修士号(MBA)首席(The Best Student Award)取得。商社にて新事業開発、台湾向け精密機械の輸出営業などに従事後、オランダの精密機械メーカーにエンジニアとして転職し、オランダに約9年在住。帰国後はフリービット株式会社(東証一部)の取締役を経て、独立。複数社の顧問をしつつ、NPOカタリバ理事なども兼任する。主な著書に『新版 はじめての課長の教科書』(ディスカヴァー)、『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』(光文社新書)など。

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