「ビットコイン」価格にとらわれ見落とす本質 インターネット以来の革命といわれる理由

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Q)インターネットで後れをとってしまった日本と日本企業が、ブロックチェーンで逆転を果たすことは可能でしょうか?

変化に対応するには、社内の技術人材の中心をシフトさせる必要があります。

しかし、日本の企業がこのような要請に対応するのは、極めて難しいといわざるを得ません。エレクトロニクス産業の場合には、それに失敗しました。日本の技術が劣化したのではなく、技術の性格が変わり、そのシフトに日本企業が対応できなかったのです。基本的な理由は、日本企業が自己完結的で閉鎖的な構造を持っていることです。

しばしば、技術開発について、「エコシステム」ということがいわれます。これは新しい技術を開発するための体制です。このコンセプトは、技術の開発だけではなく、活用についても重要です。日本企業は、「技術利用のエコシステム」において、大きな問題を抱えているのです。

日本企業によるブロックチェーンの活用事例

Q)ブロックチェーンを活用した日本企業で、注目される企業はないでしょうか?

日本企業によるブロックチェーンの活用事例もあります。

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例えば、ソニー・グローバルエデュケーションは、ブロックチェーンを教育分野に応用し、個人の学習到達度や学習活動記録などのデータをブロックチェーンで管理しようという取り組みを始めています。

就職活動をするときに、学校の成績証明書など公的機関の証明書を出しますが、それと同じようなものです。

同社は、「世界算数」というテストを行っていますが、その成績をブロックチェーンで管理するというものです。そうすると、試験でどのくらいの成績をとったかが、「正しいデータ」として分かります。

また、リクルートの子会社であるリクルートテクノロジーズは、転職支援業務の一部をブロックチェーン化する実証実験を行いました。「履歴書」「卒業証明書」などの個人データをブロックチェーンで管理し、転職時に活用することで人的資源の管理、活用を行おうという取り組みです。

事例はまだ少ないものの、こうした事例が日本でも出てきています。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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