ビットコインが「投資」にふさわしくない理由 将来の「資産運用手段」として考えていいのか

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ところがビットコインの場合は、それ自体が何も価値を生み出すものではありませんし、価格の動きも読めません。もちろん株式だって短期的な価格の動きは読めませんが、最終的には株価というものは、その企業が将来生み出す価値の合計を現在価値に置き換えたものですから、いずれは価値に収れんしていきます。

さらにビットコインの場合は、実体価値の裏付け自体がないわけですから、価格は単純に需給関係になります。すなわち「買う人が多ければ上がるし、売る人が多ければ下がる」という、極めて単純な要素だけです。

昨年のビットコインの相場は多くの人が先高観を持っている上に話題性があるため、多くの人が相場に参加し始めているから上がってきたのだろうと思いますし、このところの大きな下げは、逆にビットコインの取引に参加している人の不安心理を反映していると言って良いと思います。

資産運用手段としては、今後も不適切

一般的に過去の値動きを記録した「チャート」というのはある意味、人間の心理を表していると言ってもいいのですが、ビットコインのような仮想通貨は実体価値の裏付けがない分、人間の欲望や心理がモロにチャートに反映されていますので、わかりやすいといえば、きわめてわかりやすい形になっています。

仮想通貨が日常の消費活動で広く使用されるようになるまでには、まだまだ技術的な改良も必要であり、時間がかかりそうです。2014年に起きた「マウントゴックス事件」や今回のコインチェックのように、まだまだシステム自体に未整備な部分があると思われるからです。

今後も、仮想通貨は投機手段としては派手に価格の上げ下げが続くでしょう。投機やバブルは繰り返し起きるものです。投機自体が悪いとは思いませんが、適切な資産運用手段にはなり得ませんから、深入りし過ぎないようにすることが必要です。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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