北朝鮮の生活水準はベトナム、インド並み? 当局者が自ら公表、1人当たりGDPは904ドル

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李教授はこれらデータを開陳しながら、北朝鮮における今年の経済建設の方向性として、「すでに確立している(社会主義的で)自立的な民族経済建設を活用して生産活動を正常化させ、人民の物質的・文化的な需要を満たすことにすべての力を集中させている」と紹介。そのためには両輪が必要で、一つは自立的な民族経済の土台を固めること、もう一つは科学技術の拡充を挙げた。

韓国側発表の数値とは大きな差

「07年以降は、年率10%程度成長」。朝鮮社会科学院経済研究所の李基成(リ・ギソン)教授は自国の経済成長を強調する一方で、課題も認めた

特に、「先行基礎工業部門」として石炭、電力、金属、鉄道運輸と、相対的に北朝鮮の経済的強みを生かしながら、軽工業と農業生産にも力を入れていると説明した。電力ではまた、「10万キロワットの軽水炉原発の稼働がまもなく始まる」と発言したものの、どこの軽水炉かについては言及しなかった。

これまで、北朝鮮の経済指標は北朝鮮自らがデータを発表することがなく、そのため韓国の政府機関などが関連情報を集めて推計したものが北朝鮮の経済指標として発表されてきた。

その一つ、韓国の中央銀行である韓国銀行が「国民総所得」(GNI)として、2011年の北朝鮮の1人当たりGNIを1204ドル(前年比0.8%増)と発表している。同行はまた、2012年の1人当たりGNIは1216ドルとも発表している。さらに、韓国の民間シンクタンクで、北朝鮮経済の研究では定評がある現代経済研究院が今年7月に発表した2012年の1人当たりGDPは783ドル、11年は720ドルと発表しており、李教授が発表した数値とは乖離がある。

また、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)はアジア諸国のGDPを発表しているが、これによると2011年の北朝鮮の1人当たりGDPは506ドルと、李教授の数値とはさらに離れている。

さらに、李教授が触れた「2007年から11年まで年率10%成長」について韓国銀行の発表データを見てみると、GDP成長率は07年マイナス1.2%、08年3.1%、09年マイナス0.9%、10年マイナス0.5%、11年0.8%と、これも両者間で大きな乖離が見られる。

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