仕事のやり直しが多い人は「トヨタ式」に学べ 始める前の準備に時間と手間をかけよう

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まずしっかりと聞くことさえできれば、その先は先輩たちに聞くなり、教えてもらうなり、助けてもらうことができますが、もししっかりと聞いていなければ、せっかくの仕事が「こんなもの頼んでいないよ」とやり直しになったり、先輩が代わりに確認に行ったりするほかはないのです。

スタート前の準備には時間をかけるのがトヨタ式

上司や顧客から仕事を依頼されたとき、守るべきは「納得していないのに『わかりました』と言わない」ことです。何をやるべきかが具体的にわかっていないのに「わかりました」と言うことはミスを招き、やり直しを招く、上司にとっても本人にとっても最も不幸なことなのです。大切なのは最初の段階でしっかりと考え、十分な準備を行ってからスタートすることです。

たとえば、ある目的のために改善を行う場合、「とにかく急がなければ」と思いついた改善をすぐに行った場合、何が起きるでしょうか。

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トヨタ式では改善に先立って、できるだけたくさんの改善策を考え、それぞれを十分に比較検討を行ったうえで最善のものを選択します。いずれも時間のかかるものであり、それよりも思いついたらすぐにやるほうが効率的に思えますが、あとになって「あれよりももっといい改善策があった」となれば、コストの面でも時間の面でもムダをしたことになり、場合によっては「やり直し」をすることになります。

トヨタ式はムダを嫌いますが、スタート前の準備にはしっかりと時間をかけて、たくさんの改善策を考え、しっかりと比較検討を行い、上司や働いている人、前後の工程の人たちへの「理解」と「納得」を得てから実行に移ります。少し時間はかかったとしても、あとになって「失敗した、やり直さなきゃ」となるよりははるかに効率がいいのです。

仕事の指示を受けたときは自分自身がしっかりと理解して納得することが大切なのです。この段階での「よくわからないけれど、とりあえずやってみるか」は、「やり直し」覚悟の無謀なやり方としか言いようがありません。十分な理解と、しっかりとした準備こそが「やり直し」を排除するための大前提なのです。

桑原 晃弥 経済・経営ジャーナリスト

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くわばら てるや / Teruya Kuwabara

1956年広島県生まれ。慶応義塾大学卒。業界紙記者を経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で世界的に知られたカルマン株式会社の顧問となって、トヨタ式の実践現場や大野耐一直系のトヨタマンたちを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を幅広く主導した。一方、業界を問わず幅広い取材経験を持ち、企業風土や働き方、人材育成から投資まで、鋭い論旨を展開することで定評がある。『トヨタ 最強の時間術』(PHP研究所)、『伝説の7大投資家』(角川新書)など著書多数。

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