全米騒然!トランプ暴露本に潜む3つの疑問 「Fire And Fury」には何が書かれているのか

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3つ目の疑問は、はたしてこの本がロシア疑惑の捜査に影響を与えるかどうかである。特別検察官のロバート・ミュラー氏率いる捜査は、大統領本人への尋問の用意を含め、現在、トランプ政権にとってより危険な段階へと歩を進めている。

暴露本では、ロシア政府とつながりを持つロシア人弁護士を伴うドナルド・ジュニア氏と、クシュナー氏を含む大統領選担当者たちとの間で開かれた決定的なミーティングについて、バノン氏が語っている。これについてトランプ大統領は、このミーティングはヒラリー・クリントン氏を傷つけるための情報提供についてではなく、純粋に養子縁組法について話し合うためのものだったとしている。

『Fire And Fury』で最も多く引用されているのは、このトランプ大統領の主張は真実ではない、とするバノン氏の認識である。

トランプ陣営に伸びる捜査の手

「もし、あなたがこの行為を反逆的、非愛国的、あるいは悪いことではないと思ったとしても、私は(この行為は)これらすべてだと思っていて、ただちに米連邦捜査局(FBI)に知らせるべきだったのだ」と、バノン氏はウォルフ氏に語っている。バノン氏はまた、ミュラー氏らは、ロシアがドイツ銀行を使ってマネーロンダリングを行い、この資金をクシュナー氏らの不動産購入に充てたとみている、と指摘している。

「捜査の手は、(元選挙対策本部長)ポール・マナフィート氏と、トランプ・ジュニア氏、そして、クシュナー氏にまっすぐ向いている」とバノン氏はウォルフ氏に語っている。「事実は極めて明白なのだ」。

トランプ陣営とロシア政府がやり取りしていたことを証明する痕跡も少なからずある。「トランプ大統領が秘密裏に何をしたにしても、ロシア政府と共謀し、選挙の誠実性を明らかに傷つけた」と、ジョナサン・ラウチ氏は影響力のある法律ブログ「ローフェア」に1月上旬投稿した。

一方、クシュナー氏らの行為が反逆的だったかどうかについては、「こうした行為は不道徳で民主主義にとって大いに危険だが、誰も今まで禁止される必要があると思わなかったので、合法なのかもしれない。確かに憲法の狭義においては反逆ではない」としている。

とはいえ、「常識と日常の倫理観の観点から、バノン氏は正しいように思う」とコメント。政治的、弾劾問題の観点から言っても、判断は法律に基づくものではなく、公衆道徳に基づくものになるだろう。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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