「モアイ像」のイースター島で起きた独立運動 先住民が怒っている2つのこと

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モアイを触らないように促す注意書きも(写真:yozo/PIXTA)

イースター島を訪れる観光客の多くは、このモアイ像を見に来る。しかしモアイたちとのトリックアート的な写真を撮ることに夢中な観光客の行き過ぎた遊びが、地元の人たちの神経を逆なでしているのも事実だ。

夕日スポットとして知られるモアイの像がハンガロアの集落内にある。穏やかな海を背に立つモアイ像の基盤、アフに立とうとする観光客たちを見つけては、地元の子どもたちが「ノー!」と走って怒りにくる場面に何度か出くわした。

観光客数は2年後3倍に膨らむとの予想も

チリ政府による2012年の統計ではイースター島を訪れる観光客は年間4万人で、圧倒的に多いのはチリ人だが、日本人の観光客も年間1442人と、外国勢の中ではアメリカ、フランス、ペルー、ブラジル、ドイツに次いで6番目に多かった。

2009年の8月にはラパヌイの人々が観光客の滞在日数の制限を求めて島唯一の空港を2日間にわたってブロックした。反対しているのは世界遺産にも登録されている島の繊細なエコシステムを破壊しかねないマスツーリズムだ。島を訪れる観光客は増え続けており最近では年間10万人と言われている。そしてチリ政府はこの数字が2020年には3倍に膨れ上がりかねないと予想している。

先述のテントの女性がこう話していた。「観光客に来るなと言っているわけじゃない。島の経済の8割は観光業で成り立っているし、われわれはその収入を必要としている。でも、モアイはわれわれの先祖の墓なの。あなたたちは自分の国で何も知らない観光客が先祖の墓を踏んづけていたら、あるいは大仏を馬鹿にした写真を撮っていたら、どういう気分になるね?」

島の経済の8割は観光業で成り立っているからこそ。独立が現実かどうかはさておき、島人たちが侮辱されていると感じる行為は慎みたいものだ。

寺井 暁子 作家

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てらいあきこ / Akiko Terai

1982年生まれ。2013年『10年後、ともに会いに』(クルミド出版)でデビュー。米国大学卒業後、日本で通信会社勤務、ビジネスコンサルタントを経て、旅のルポルタージュを書き始める。世界の人々が自らの人生と社会に向き合う様を取材し、雑誌や海外新聞等に寄稿している。

2015年にマサイ族の長老と英国探検家の子孫との交流を描いた『草原からの手紙』(クルミド出版)を上梓。2018年夏、アフリカナイル川流域のミュージシャンたちによる音楽バンドを取材した「ナイル・ナイル・ナイル」(英治出版)が発刊予定。日英スペイン語間の取材・通訳をこなし、最近、中南米1年の「暮らす旅」から帰国。

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