遠藤保仁が「ルーティン」をもたない深い理由 「今、この瞬間」に集中するための思考

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また、闘争心を表に出すどころか、試合中に笑うこともあるので、人によっては「気合いが足りない」「もっと本気でやれ」という印象を与えるときがあるかもしれませんが、これも僕は冷静さを失わないために、あえてプレー中でも笑顔でいることを心掛けるよう意識しているからなのです。

苦しいときやうまくいかないときに一度、笑ってみると、自然と冷静になれるものです。そのメカニズムまではわかりませんが、笑顔になることで心に余裕が生まれて、視野が広くなる感覚があります。

また、笑顔を見せることで、心理面で敵チームより優位に立てるというメリットもあります。後半の正念場ともいえる時間帯に笑っていたら、「あいつ、まだ余裕があるのか。やばいな」と敵の選手は思うのではないでしょうか。逆に、イライラしている顔や疲れている顔を見せたら、「あいつは余裕を失っているからチャンスだ」と敵に思われ、不利な状況に陥りかねない。試合中にミスをしたときも、落ち込んで次のプレーに影響が出るくらいなら、あえて笑顔をつくって思考を切り替えたほうがいいというのが僕の考え方です。

つらいときほど笑顔を意識してみる

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サッカーでは、いかに個人のミスをチームでカバーできるかが勝敗を決めるといえます。組織力があるチームは、ミスをお互いにカバーし合っているものです。失敗してヘラヘラしているようでは困りますが、周囲は「いいよ、気にするな」「ナイストライ」と声をかけてあげて、それに対して失敗した本人も笑顔を見せて気持ちを切り替えて次のプレーに集中する。そんなチームだからこそ、みんなが最後まで、全力で、冷静に戦うことができるように思います。

ビジネスの世界や人生でも同じではないでしょうか。疲れた顔やイライラした表情をしていたら、その人のまわりに人も情報も集まってこないはずです。反対に、いつも明るく振る舞っていると、何かと助けてもらえたり、チャンスとなりうる誘いの声をかけてもらえたりする、そんな気がします。また、そんなことは当たり前だと思われているため、多くの方々が見逃しがちなのも事実です。ですから、最初は慣れないので大変かと思いますが、つらいときほど笑顔を意識してみてはいかがでしょうか。

遠藤 保仁 サッカー選手

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えんどう やすひと / Yasuhito Endo

1980年1月28日、鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルスに入団。京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)を経て、2001年にガンバ大阪に加入。数々のタイトル獲得に大きく貢献し、2003年から10年連続でJリーグベストイレブンに選出され、現在もガンバ大阪の中心選手として活躍中。また、U-20日本代表をはじめとし、各年代の日本代表に選出され2002年11月に日本代表国際Aマッチデビュー。その後は、日本代表の中心選手として活躍し3度のワールドカップメンバーに選ばれる。「日本代表国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「東アジア最多出場記録」「2009年アジア年間最優秀選手」「2014年JリーグMVP」など数多くの記録を持つ。178cm、AB型。
遠藤保仁オフィシャルサイト
遠藤保仁・公式ブログ

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