乗客が「駅ホーム下」で雨宿りする複雑な事情 日本がジャカルタに作った通勤新線の悲運

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電化区間に変わったタンブン駅。屋根がないためスコール時に乗客がホーム下で雨宿りした(筆者撮影)

インドネシアの現地紙が、2017年10月8日に延伸開業したばかりのインドネシア通勤鉄道(KCI)ブカシ線・タンブン駅で起きた珍事を紹介している。タンブン駅で多くの客が電車待ちをしていたところ、突然のスコール。乗客はあわててプラットホームの下にもぐり大雨をやり過ごしたというのである。

この延伸は我が国の円借款を活用した政府開発援助(ODA)によるもの。延伸でタンブンなどの4駅がKCIの営業駅として加わった。真新しいはずの駅なのになぜ屋根がないのか、と思われるかもしれないが、これには理由がある。

そもそも、この延伸計画は「ジャワ幹線鉄道 電化・複々線化事業」の一角をなすもので、2001年に約410億円を上限とする円借款契約が結ばれた。調達条件は日本タイドで、具体的にはブカシ線・マンガライ―ブカシ間の複々線化、ブカシ―チカラン間の電化、マンガライ駅の立体化(ボゴール線との平面交差解消)、信号設備等関連設備更新およびコンサルタントサービスがパッケージに含まれていた。複々線化工事に係る土地収用はインドネシア政府が行い、路盤整備、一部構造物の建設(コンクリート製橋梁等)が、日本企業による本体工事に先行して実施された。

日本が行ったのは「必要最低限」のみ

しかし、一部区間で用地買収が難航し、さらに、先行工事においてインドネシア側の設計ミスもあったといわれている。そこで、日本側は早期に着工できる一部パッケージのみを継続することにした。それが今回完成したブカシ線のチカラン延伸である。

2012年に住友商事が約210憶円で落札した「パッケージB1」と呼ばれるもので、マンガライ駅の架線柱取り替え(2016年5月完成)、マンガライ―チカラン間信号設備更新(2017年9月、一部区間を除く)、ブカシ-チカラン間電化工事及び新駅設置などが含まれた。要するに、今回のブカシ-チカラン間の延伸にかかわる最低限のプログラムである。もともとあったタンブン駅でいうと、単に架線を張るだけなのだ。

そして残りの部分については、すでに円借款供与の期限を超過したため、ODA事業としての継続が不可能になり、インドネシア予算・企業による事業に切り替わり、工事が進められることになった。ただし、いまだに用地買収が済んでいない箇所もあり、全プログラムの完成時期には不透明な部分がある。

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