ドアラのディナーショー、転売業者の狂騒曲 運営停止「チケキャン」をミクシィは正せるか

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ダフ屋行為は「公共の場での売買」という要件を、ネット空間での取引に適用するのが難しかった。詐欺は、「転売を禁止して発売した発券元を、だまして購入したこと」を詐欺とするロジックなのだが、そもそも詐欺自体が立証ハードルが高い。

一方、古物営業法は、古物の売買を業として行うには古物営業許可を取得せよと定めており、違反した場合の刑罰規定(3年以下の懲役または100万円以下の罰金)もある。同法上の古物にはチケットも含まれ、チケキャンに協力させれば同法違反での摘発は数百人単位で可能だったにもかかわらず、摘発実績はゼロだ。

ミクシィは調査委員会を設置、商標法違反、不正競争防止法違反に問われたことについての事実確認と原因の究明に加え、プラットフォームに内在するリスク・問題点の調査を依頼した。調査委が高額転売問題に踏み込むのかどうかは「調査委の判断次第」(ミクシィ)。

急成長を遂げたとはいえ、チケキャンの売上高はミクシィの連結売上高全体の2%にすぎない。

プラットフォーム自体の利用価値を高める機会

経済合理性とリスクを天秤にかけた場合、ミクシィがあっさり、このままサービスを再開することなく撤退を決めてしまう可能性は十分にある。しかし、ゲッターの跋扈を放置したことが問題なのであって、一足飛びにプラットフォーム自体のニーズまでも無視して良いのか。

ゲッターは高値で転売できるからこそ、コストをかけてチケットを仕入れる。経済学的には、興行側が、チケットを需要に見合わない安値で発売するから、高値でも買う買い手が現れる、だから興行側にもゲッター跋扈の責任の一端はある、という説も耳にする。

だが、少なくとも古物営業許可を持たない、反復継続的な出品者を排除するだけで、かなりの効果があるはずで、次になすべきは出品価格の上限を定価プラスシステム使用料程度に抑制することだろう。興行側の発売価格をうんぬんするのはその次の段階ではないのか。

フンザ、そしてミクシィには、安易に逃げることなく、今回の事態が健全なプラットフォームへの転換の機会となることを望んでやまない。

【12月27日9時30分追記】記事初出時、文中に「第三者委員会」との表記がありましたが、正しくは「調査委員会」でしたので修正いたします。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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