ゼネコン、リニア談合の遠因は巨額建設費? 特捜が大手4社を家宅捜査、背景にあるもの

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リニア中央新幹線はあくまでJR東海という民間企業の事業であり、建設費も自前で負担するのが原則。ゼネコンにとってリニア工事の採算は良くない。

「品川駅の工事では、JR東海の予算がゼネコンの想定よりも厳しく、入札が不調になった」(ゼネコン幹部)。そのため、受注調整によってできるかぎり競争を避けようとする動機が生まれる。

JR東海としても、国からの巨額の資金援助(財政投融資)を受けているため、建設費のいちじるしい膨脹は見過ごせない。

「名城非常口は90億円で落札されたようだが、受注調整がなければ、(ゼネコンが利益を得ようと)更なる高値を提示していた可能性もある」(別のゼネコン幹部)など、受注調整がJR東海とゼネコンの間で価格をすり合わせる役割を果たしていたと指摘する声も上がる。

入札方式に不透明さも

入札方式が不正を助長した側面もある。JR東海が採用した「公募競争見積方式」は、価格以外に工期や技術などを受発注者が協議して落札業者を決める。客観的な指標がなく、決定方法が不透明になりやすい。

実際、落札済み工事を見ても、山岳工事が得意な鹿島と大成建設は南アルプスのトンネル工事という難工区、土木技術で後れを取る清水建設は中規模の土木工事や変電施設の建築など、“すみ分け”ができている。

最近でも似たような構図の事案が起きている。今年9月、東日本高速道路と中日本高速道路は、東京外環自動車道の中央ジャンクション付近の工事について、「談合の可能性が払拭できない」として入札を中止した。

ある工区で優先交渉権を得た業者はほかの工区では優先交渉権を得られないという入札条件がすみ分けを助長し、事実上の談合を招いていたとみられる。

今後の懸念されるのは、2027年を予定している開業時期への影響だ。「(捜査を受けて)JR東海も受注手続きを厳格化せざるを得ない」(ゼネコン幹部)ことに加え、大工事を請け負える人手や技術力を持つ大手ゼネコンが及び腰になれば、工事の遅れる懸念もある。

当のJR東海は「開業時期に影響はない」としている。

大手ゼネコン4社が2005年に「談合決別宣言」を出した後も、繰り返される談合。懲りないゼネコンに司法はどんな灸(きゅう)を据えるのか。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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