京急空港線「5年後に大幅値下げ」実現するか 品川―羽田空港間410円が240円になる?

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ただし、国交省は、加算運賃だけで回収するのではなく、基本運賃収入からも回収率の計算に充てると主張した。そこで、問題はどの程度、基本運賃から資本費回収に回すかだが、国交省が消費者委員会に示した条件は下記である。

加算運賃の終了時期については、以下の算定による回収率が100%に達するまでとする(なお、終了時期前であっても鉄道事業者の経営判断により、加算運賃を減額、又は廃止することは、当然に認められる。)。
回収率=(「加算運賃収入の累計額」+「基本運賃収入からの回収累計額」)÷「資本費コスト合計額」×100
〔算定方法〕
1)加算運賃収入の累計額(毎年度の加算運賃収入の累計)
2)基本運賃収入からの回収累計額(毎年度の次の計算による額の累計)
「鉄道事業の配当後最終利益(損失の場合は0)」×基本運賃収入割合(加算区間/全線)
3)資本費コスト合計額(加算運賃設定時の設備投資額及び加算運賃設定に係る施設使用料・支払利子等の累計額)

京急はあと5年で加算運賃を廃止?

この提示を受けた消費者委員会では公認会計士のヒアリングも行い、情報開示の面では前進であるとしても、加算運賃廃止時期についてはさらに検討する余地があると判断したが、国交省はこの条件を各鉄道会社に早々と通達してしまい、現在これにより情報開示、運賃見直し時期が判断されている(国交省2013年10月17日加算運賃通達)

この通達基準にしたがって、京急は現在の加算運賃の回収状況を以下のように示している。

これを見ると2016年までの回収率は71%で、回収に寄与する基本運賃からの算入額がかなり低いことがわかる。それでも回収が毎年5%ほどずつ進んでいるから、このままの状況が続けば、あと5年ほどすれば回収率が100%となり、加算運賃170円は廃止しなければならないことになる。ただし、運賃が激変するので、それより早く小幅な値下げをはじめ、最終的に廃止することも可能であり、京王電鉄相模原線がその方式である。そうなるとより早く運賃値下げの時期が来ることになる。羽田空港への東京モノレールと京急の競争環境が激変することは明らかであり、注目される。

細川 幸一 日本女子大学教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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