京急空港線「5年後に大幅値下げ」実現するか 品川―羽田空港間410円が240円になる?

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現在、加算運賃が設定されている区間は14社20路線ある。この中にはJR北海道千歳線(新千歳空港線)の140円(1992年)、京成電鉄空港線(成田空港線)の140円(1991年)などがある(ともに大人普通運賃)。

加算運賃の設定自体に異論はないとしても、問題はその見直し時期だ。長期間にわたって加算運賃が続いている区間が多いのだ。

京王電鉄も相模原線の加算運賃を引き下げる。写真は新型の5000系(撮影:尾形文繁)

しかし、加算運賃はあくまで時限運賃であり、国交省は国会や運輸審議会での審議の中で、「10年50%」を廃止等の目安として示してきた。10年で新線の資本費50%が加算運賃で回収できるように金額が決められ、かつ、その時点で廃止等の見直しをする制度であるのだが、そうなってはいなかった。

まず、情報がまったく開示されていなかった。一昔前までは資本費の額も回収状況も一切鉄道会社から明らかにされず、国交省も関与していなかった。社会から批判されようやく簡単な情報開示が行われるようになった。

国交省が廃止時期の基準を変更?

次に情報が提供されはじめたのは一歩前進だが、回収率が50%になっても一向に加算運賃の見直しが行われてこなかった。内閣府消費者委員会はこれを問題視し、2012年2月に関係大臣等に対して行った「公共料金問題についての建議」において以下の内容を国交省に求めた。

「加算運賃を導入している路線の運賃回収状況や、長期間、加算運賃を継続する必要性等については、説明責任が十分に果たされているとは言い難いことから、当該情報についての確認を行い、適切に情報提供を行うこと。なお、確認の結果、加算運賃の必要性が乏しくなったと判断される場合には、事業者に対して、加算運賃の見直しに係る適切な指導等を行うこと」

これに対応した国交省は情報の公開については鉄道各社に行わせることとし、大きく前進したが、加算運賃の見直し時期については回収率が50%ではなく、100%だと言いだした。従来の発言の意味は10年で50%が回収できるように加算運賃の金額を決めたということだけであり、廃止を含めた見直しの時期ではないと言い始めた。

しかし、これは詭弁としか思えない。当事者である京急自身も、回収率50%段階での加算運賃廃止を強く求めてきた大田区議会との会合(2011年4月6日・京急本社で開催)のなかで、同社の総務部長が「加算運賃を未来永劫に続けるつもりはない。タイミングをはかって対応したいと考えている。実際、回収達成率5割という加算運賃廃止の目安はある」と発言している(金子悦子大田区議の公開議事録より)。

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