─ 日本大学理工学部は、3年後の2020年に創設100周年を迎えます。卒業生数は約23万人と、理工系の世界では非常に大きな存在となっています。
日本大学理工学部長
岡田 章
Akira OKADA
1954年2月8日徳島県生まれ。77年日本大学理工学部卒。 79年同大学大学院理工学研究科博士前期課程建築学専攻修了。 82年同研究科博士後期課程建築学専攻単位取得退学。2004年同大学助教授、07年同教授。17年10月、理工学部長に就任。
岡田 卒業生の多くがさまざまな分野で社会に貢献していることは、私たちの誇りです。しかし、裏を返せば、それだけ教育者としての責任も重大ということになります。私たちのミッションは理工の力、つまり科学と技術の力を基礎とし、社会に役立つものづくりを行う「実務者の養成」です。これは本学部が創設以来一貫して行ってきたことであり、次の100年もこの伝統を堅持しながら、時代の要請に応える人材を輩出していかなければなりません。
本学部の特長は規模の大きさです。理学・工学の各分野で高い専門性と多様性を兼ね備えた14の学科があり、約1万人の在学生に対して、約1000人の教員がいます。本学部で学んでいただければ、きめ細かな教育を十二分に受け、4年後にはものづくりの第一線で活躍できる人になり得る。しかも、同期生はもちろん、年代を超えた豊かな人脈が築ける。この強固なネットワークは、他大学では得難い財産ではないかと思います。
─ 多くの学生、教員が集う校舎は、駿河台と船橋の2キャンパス制。18年6月には駿河台に新校舎も竣工します。
岡田 ものづくりを担う上で重要なのは、時代のニーズを肌で感じることと、実務、実践を繰り返す中で自ら考え、創造するための技術を身につけ磨いていくことです。その点で、駿河台キャンパスは、東京という時代の先端を行く街の文化に触れられるという地の利があります。
一方の船橋キャンパスは、東京ドーム6個分の広大な敷地に、自動車・二輪車の走行試験や小型飛行機・人力飛行機の曳航試験などが行える全長618メートルの交通総合試験路をはじめ、最先端の大型実験ができる研究施設を擁しています。理工学の教育上、非常にバランスの良い理想的な環境だといえます。
2018年6月には駿河台に念願の新校舎「南棟(仮称)」が竣工します。理工系の教育・研究拠点としてふさわしい最新の設備が整った素晴らしい施設です。今後は、南棟に隣接する5号館を解体、19年を目途に公開空地として学生や周辺地域の方々が憩える空間が誕生します。
また、ニコライ堂に隣接する場所には、南棟と対になる「北棟(仮称)」の実現をめざしています。理工系の学問の全容が一覧できるミュージアムや図書館といった地域開放型施設の新設など、さまざまな方面からの意見を聞き、構想を練り上げていこうと思います。
キーワードはものづくりことづくり、ひとづくり
─ カリキュラムの改定については、どのようにお考えですか
岡田 まず学部生については現在、1年次の前期に学修の動機づけや手法を身につける「インセンティブ科目」を、4年次には幅広い専門知識の修得を確認すべく「卒業達成度評価科目」を設置するなど、特色のあるカリキュラムを取り入れています。これに加え、検討の最終段階に入っている新カリキュラムでは、他学部の学生との協働学修を含む「自主創造の基礎1・2」という必修科目を1年次に設置する予定です。「自主創造」とは、本学の教育理念であり、自ら考え、その判断に基づいて行動を起こし、自ら進む道を切り拓いていく能力を指します。これからの時代にますます必要な力ですし、ネットワークを学部外にも広げるよい機会になると思います。
また、16専攻からなる大学院については、社会の要請に応えるべく、科目の統廃合を行いながらも、これまで以上に学部と大学院のカリキュラムの連続性・発展性を強化したカリキュラムに整備したいと考えています。さらに、インキュベーター型の産学連携事業も積極的に推進していきます。研究施設・実験設備やオフィス空間、人材などを提供し、企業と教員・学生との共同研究の場を作ろうと思います。
そして、「スター研究者」の育成にも取り組みます。素晴らしい研究をしていて、発信力のある研究者を擁することで、他大学から多くの大学院志願者が集まってくれば、大学院の質や国際性も一段と高まるはずです。
─ 近年、理工系で学ぶ女性が増えています。
岡田 私の所属する建築学科は約3割、他学科も2割程度の女子学生が在籍しており、卒業生を招いたキャリア教育など、女子学生支援を行っています。もともと理工系は、性別を問わず、人が生涯にわたり活躍していく能力を獲得するのに適した学問分野だと思っています。
アメリカではオバマ前大統領が、科学技術及び経済分野での国際競争力を維持、発展させるための人材を育成するべくSTEAM教育を国の施策として掲げました。STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)のことです。
私たちはそこからさらに一歩進んで、この五つの要素の連関によって形成された知見をベースに、Design(デザイン)を通して「もの」をRealization(具現化)する力を涵養するCollege(学部)として「CST×DREAM」教育を実践していきます(CST= College ofScience and Technology=理工学部)。
単なるものづくりではなく、ものづくりを通じて世のため、人のためになる新しい文化を拓いていく「ことづくり」にチャレンジする。デザインしたものは机上の空論で終わらせずに、確実に具現化する。
そんなことを可能にする「ひとづくり」を行い、未来に翔かけるユメをリアルにする新世紀の教育・研究を推進していきます。