ボルボ「XC60」に並み居る日本車が負けた理由 日本カー・オブ・ザ・イヤー17-18選出の裏側

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次点はBMW「5シリーズ」だった

近年まれにみる混戦の理由の1つとしては、「航続距離大幅アップ」と自動運転技術「プロパイロット」を武器に2代目に進化した日産自動車のEV(電気自動車)「リーフ」が、完成検査問題を受けてCOTY選考対象から辞退したことも大きかったのも事実である。

そういう意味では「今年のCOTYは本命なき戦い」と揶揄する人もいるが、筆者の考えは非常に単純で、いいクルマが多いことから最高得点10点の配点が分散されてしまった、と思っている。

60人の選考委員が10点を投じたモデルは下記である。

1位 ボルボ「XC60」 9人
2位 BMW「5シリーズセダン/ツーリング」 4人
3位 トヨタ「カムリ」 14人
4位 スズキ 「スイフトシリーズ」 11人
5位 ホンダ 「N-BOX/N-BOXカスタム」 10人
6位 レクサス 「LC」 8人
7位 アルファロメオ 「ジュリア」 2人
8位 マツダ「CX-5」 0人
9位 シトロエン「C3」 2人
10位フォルクスワーゲン 「ティグアン」 0人

このように総得点で3~5位のモデルのほうが10点の配点が多い。ちなみに昨年を振り返ると、10点を投じたモデルはイヤーカーとなったスバル「インプレッサスポーツ/G4」が25人、2位のトヨタ「プリウス」が22人だった。

突出こそしていないが多くの選考委員から支持を集めた

となると、重要なのは残りの15点をどのように配点するかなのだが、ここでボルボXC60に配点をした選考委員を見ると60名中54名。そういう意味では、今回の結果はモータースポーツの世界で言う「優勝回数は少ないが確実にポイントを稼いでタイトルを獲得」に近いのかもしれない。とはいえ、つまり、多くの選考委員が「いいクルマ」であると判断したことも事実である。

ちなみにCOTY選考委員の配点は日本カー・オブ・ザ・イヤーの公式サイトで全て公開されているが、筆者は下記のように配点した。

・スズキ「スイフトシリーズ」 10点

・ボルボ「XC60」 6点

・ホンダ「N-BOX/N-BOXカスタム 4点

・BMW「5シリーズセダン/ツーリング」 3点

・トヨタ「カムリ」 2点

このように筆者は今年のイヤーカーとは違うクルマに10点を投じているが、今年のイヤーカーとなったボルボXC60素直に称えたいと思う。一度試乗してその実力を体感してほしいところである。

ちなみに点数は一人歩きしがちながら、重要なのは各選考委員が10点を投じたモデルの「選考理由」であり、そちらも日本カー・オブ・ザ・イヤーの公式サイトに掲載されている。

ネット上では輸入車がCOTYを獲得したことに加え、比較的高価格帯かつボディサイズも大きなXC60がイヤーカーになったことに対し否定的な意見も聞く。日本人としては「日本車頑張れよ!!」といった想いもわからなくないが、海外のカー・オブ・ザ・イヤーを見ても必ずしも自国のモデルばかりが受賞しているわけではないことも認識してほしい部分だ。

山本 シンヤ 自動車研究家

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やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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