「40代で育児を始めた人」を待ち受ける"危機" パラレルキャリアで定年後に備えないと…

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パラレルキャリアには、会社勤めでは得られない出会いがあります。異業種の仲間の視点を吸収でき、別の世界の扉を開く人脈もできるため、新たなキャリアやライフスタイルにつながる可能性も高いのです。

「仕事のキャリア」から「ライフキャリア」へ

社会人を対象とする、法政大学大学院政策創造研究科の石山恒貴教授(編集部撮影)

とはいえ、「仕事が忙しいから無理」という人も少なくはないでしょう。そこで、「保守的な熟年パパ世代」に、どんな危機が待っているのかを法政大学大学院政策創造研究科の石山恒貴教授に伺いました。

『パラレルキャリアを始めよう!』の著者であり、企業の人事政策にも詳しい石山教授は、「自分の人生をより長期的な視点で捉えるべき」と話します。

「2016年に、人生100年時代を示唆するリンダ・グラットンらの『ライフシフト』が話題になり、“3ステージのキャリア・モデル”は終わったと感じます。“若年期は教育”“中年期は仕事”“老年期は引退”というモデルは、もはや現実的ではありません。なぜなら、人生100年時代には定年後に長生きする可能性が高く、長い引退生活を送ることが難しくなるからです」

そもそもの問題は、「キャリア=職業のキャリアという日本的な考え方そのものにある」と石山教授。『ライフシフト』の中には、“ポートフォリオワーカー”という言葉が出てきますが、これは職業としての「有給ワーク」だけでなく、「家庭ワーク」「ギフトワーク(社会貢献)」「学習ワーク」といった、さまざまな分野での活動を並行していく働き方のことです。

「職業のキャリアは、結婚、育児、出産、介護、病気など人生の出来事と深く結びつき、職業と人生をはっきり分けることが非現実的です。一方、人生全般における多様な役割を通じて培うものが“ライフキャリア”です。さまざまな役割を組み合わせ、並行することが、相互に好影響を与えるため、人生をより充実できます。逆に言えば、仕事に追われているのみでは、定年後に“何もなくなる”可能性があるのです」(石山教授)

確かに欧米では、家庭、趣味、地域活動などに時間を割くことが当たり前と聞きますが、日本にはそうした土壌がありません。パラレルキャリアを推進するには無理があるのでは?

「いまだ企業側には浸透していませんし、副業・兼業について『情報漏洩の危険があり、仕事がおろそかになる』と捉えているようですね。私の講義に参加している社会人学生も、かなり多くの人が会社に隠れて通っています。上司や同僚から『この忙しいときに残業しないのか』と責められたり、『転職するつもりか』と勘ぐられたりする可能性があるからだそうです」

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