小田急新型ロマンスカー「過剰な装飾は不要」 ブームに背を向け、木材の使用を極力減らす
抜けるような青空の下、深紅に輝くボディが姿を見せた。小田急電鉄が開発していた新型特急ロマンスカー「70000形」(愛称:GSE)がようやく完成し、12月5日、神奈川県相模原市の車両基地で公開された(関連記事「小田急ロマンスカー「GSE」はここが凄い)。
ロマンスカーは小田急が走らせる特急列車の愛称だ。全国で盛り上がりを見せる観光列車ブームのはるか前から、小田急は箱根や江の島といった観光地と都心を結ぶ観光特急としてロマンスカーを走らせてきた。
運転席を2階に配置して前方を展望席にするのがロマンスカーの伝統的なスタイル。長年ファンに親しまれ来年の引退が予定されているLSE、2005年に運行した現在のフラッグシップ車両であるVSEがその代表格だ。
来年3月中旬から営業運転が始まるGSEは、朝夕の通勤時間帯は通勤特急としての役割を担いつつ、展望席というロマンスカーの伝統を引き継いだ。小田急によれば、VSEはGSEと対になる二枚看板という位置づけだ。
ロマンスカーが不動産価値を高める
ロマンスカーの製造費はどれくらいか。VSEは2編成で、製造費は合計35億円。フラッグシップであり、「久しぶりのロマンスカーということで気合いを入れ、おカネをかけた」(星野晃司社長)ということで、一般的な特急車両よりも割高だ。
GSEも2編成が製造されるが、その価格は約40億円。VSEよりも約5億円高い。その差について小田急は「VSE製造から10年以上経過し、労務費や材料費が値上がりしている」(CSR・広報部)と説明し、VSEとGSEに価格による機能上の違いはないと強調する。
いずれにしても高い買い物であることは間違いないが、小田急にはそれだけの投資を上回るメリットがある。「ロマンスカーに止まってほしいという町の要望が多い」と、星野社長は胸を張る。「かつては町田駅や本厚木駅くらいにしか止まらなかったが、秦野駅に止めたら、住んでみようという人や、進出する企業が増えた」(星野社長)。つまり、ロマンスカーには町のブランドを高める力があるというわけだ。小田急が行う不動産開発にとってもメリットは大きいはずだ。
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