TBS「陸王」に沸くロケ地・行田の熱気と課題 ドラマ効果で名産の足袋が売れまくり

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忍城址は2012年公開の和田竜氏の歴史小説が原作の映画『のぼうの城』の舞台になった。各地から観光客が訪れるという。(写真:記者撮影)

陸王効果に沸く行田だが、実はそれ以外にも地方創生に取り組んできた自治体でもある。

これまでも行田市は、県名発祥の由来となった「埼玉(さきたま)古墳群」や「忍城址(おしじょうし)」、毎年夏に古代蓮が見頃を迎える「古代蓮の里」をはじめとした地域資源を生かすことや、10年前から事業を始めた「田んぼアート」の世界ギネス認定など、行田ならではのまちづくりに取り組んできた。今年の夏には「陸王」の主人公で役所広司さんが演じる「こはぜ屋」4代目社長宮沢紘一をモチーフにした田んぼアートも、話題となった。

日本遺産認定はゴールではない

市民憩いの地となっている水城(すいじょう)公園。周囲を水に囲まれた忍城の堀の端部分が公園となった。この近くに大型宿泊ホテルが建設予定だ(写真:記者撮影)

今後、行田にとって課題となるのが訪日外国人観光客の呼び込みだ。

これまで行田市には、地方の観光地にあるような大型の宿泊ホテルがなかった。すでに行田にも中国本土や台湾、韓国などアジア系の訪日客を中心に外国人観光客が増加している。このため、現在、中心市街地に近い水城公園そばに100室以上の客室を擁する宿泊ホテルの建設が2018年春以降の開業に向けて進められている。

2019年のラグビーワールドカップは行田市の隣、熊谷スポーツ文化公園を会場に試合も行われる。2020年には東京オリンピックも控えており、この機に観光地としての行田を国内外にもっとアピールしていく必要があるだろう。

「自分たちですばらしい地域資源があるとアピールしても観光客には来てもらえない。料理にたとえれば、行田市にはいい食材がそろっていたが、それを美味しく調理できるシェフがいなかった。美味しい料理を前面に押し出せる仕組みづくりが必要」と工藤市長。一方で、「いま注目を集めている行田が独り勝ちしようとはまったく考えていない。熊谷市や羽生市など県北の地域や近隣地域が一体となって盛り上げていきたい」

工藤市長の発言の背景にあるのは、埼玉県北地域の、都心部への人口流出や少子高齢化に伴う人口減少の問題だ。埼玉県の中でもさいたま市などの県南地域との地域格差は広がる一方。いよいよクライマックスを迎える「陸王」に乗っかったブームを一過性で終わらせず、広がりと持続性のある地方活性化につなげていく取り組みが一段と求められている。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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