子どもには「好きなこと」をやらせるべきだ 成毛眞氏が提案する「生き抜く能力」の磨き方

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もちろん学校の勉強なんてやる暇はなかったが、それでも彼女はなんとか大学に進み、卒業後は某総合商社に就職した。そうしたら、配属された穀物のトレーディング部門ですごい成果を上げ、30歳にしていきなりチーフトレーダーに抜擢されてしまったのである。

取引を有利に進めるには、競争相手の心理や相場を読む判断力、ここだというときに躊躇せず最善手を打つ瞬発力などがいるが、そういうものはすべてゲームで身に付けたと彼女は言っていた。

それはそうだろう。教科書のカビの生えた知識など足元にも及ばない、時代の最先端をいく技術と英知が、ゲームには詰まっているのだ。

子どもには、好きなことをやらせろ

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ちなみに、私の周囲で活躍している20〜30代の人たちは、ほぼ例外なく学生時代に、かなりの時間を勉強よりゲームに費やしてきている。これをみてもわかるように、子どもの未来を生き抜く能力を育てるには、早くから最新のハイテクに触れさせることが最も有効なのである。だから、ゲームやスマートフォンを禁止するようなことを、親や先生は絶対にすべきではないのだ。

アメリカやカナダには、電気や自動車といった近代文明に背を向け、農耕や牧畜をしながら昔ながらの生活を送るアーミッシュという人たちがいる。ゲームやスマホ禁止というのは、アーミッシュのように生きろといっているようなものだ。そういう人はアーミッシュから、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズが生まれると信じているのだろうか。

ゲームに限らず子どもには、好きなことをやらせるのがいちばんだ。サーフィンでもアニメでも何でもいい。大事なのは「何かに熱中できる人間になる」ということなのである。1日8時間ゲームに熱中できる人は、対象が仕事に変わったらやはり同じように熱中して取り組むので、成果が全然違うのだ。そういう人は英語だって、仕事に必要だとわかった途端に、ものすごい集中力を発揮して勉強する。だから、1年もあれば外国人と会話ができるようになってしまう。熱中する訓練ができていれば、学生時代からこつこつTOEICの勉強などしなくてもいいのである。

そう考えると、これから未来をつくっていくのはオタクかもしれない。そういえばかつての私の上司のビル・ゲイツも、絵に描いたようなオタクだった。

(構成:山口雅之)

成毛 眞 元日本マイクロソフト社長、HONZ代表

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なるけ まこと / Makoto Naruke

1955年北海道生まれ。元日本マイクロソフト代表取締役社長。1986年マイクロソフト株式会社入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は、書評サイトHONZ代表も務める。『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)、『アフターコロナの生存戦略 不安定な情勢でも自由に遊び存分に稼ぐための新コンセプト』(KADOKAWA)、『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』(SB新書)など著書多数。

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