また、会議やパーティなど大勢の人がいる場所で相手の声が聞き取りにくい――。音楽をイヤホンやヘッドホンから大音量で聴く――。ご自身の聴力について不安に思ったことはないだろうか。
仕事や人間関係にも悪影響
音が少しくらい聞こえにくくなっても、老化現象だから仕方ない。生活にそう支障があるわけでもないだろうから、放っておけばいい。そう私たちは考えがちだ。
しかし、聴力の低下が進むと、人と話をしていても相手の言っていることがよく聞き取れず、聞き返すことが多くなる。そういうことが度重なると、話がかみ合わなくなり人間関係にも悪影響を及ぼしかねない。人と話をすること自体が億劫になり、外出を控え、外的な刺激の少ない生活を送りたくなる。しかし、そのような生活のリスクが指摘されている。政府が策定した認知症対策の国家戦略『新オレンジプラン』では、難聴を認知症の危険因子の一つに挙げている。
もちろん聴力の低下が、加齢ではなく何らかの疾病や外的要因により起きている場合もある。だから「聞こえにくくなったことを安易に考えないほうがいい」というのは、オーティコン補聴器の木下聡プレジデントだ。
プレジデント
木下聡氏
「聴力が衰え始めるのは、40代くらいからです。もちろん個人差があり、70歳になってもよく聞こえるという方は珍しくありませんが、一般的には50歳くらいになったら注意したほうが良いといわれています。自分で気づかなくても、家族や周囲の人から指摘されることもあります。聞こえにくくなることはさまざまな面でストレスになりますから、そういうときは頭ごなしに否定するのではなく、自分の聴力の衰えと向き合い、まず、専門医に相談することをお勧めします」
全方位360度の音環境をスキャン
専門医から補聴器の使用を勧められたら、まずは試してみたほうがいいのではないだろうか。補聴器と聞くと、抵抗を感じる人もいるだろう。しかし、今は耳に装着しても外部からはほとんど見えないものも多い。また、日本補聴器工業会が発表した『JapanTrak 2015調査報告』によると、補聴器を持っている人の実に84%が、補聴器の使用により生活の質(QOL)が改善したと答えている。
しかも、補聴器そのものも進化している。たとえばオーティコンの「オープン」は、つねに全方位360度の音環境をスキャンし、音の情景を毎秒100回以上、64の信号処理チャンネルを通して分析することができるという。それによってどういう「聞こえ」が実現するのか、木下氏がこう解説する。
「従来の補聴器は指向性があり、正面にいる人の声はよく聞こえても、隣から話しかけられると聞き取りにくいことがありました。人間の脳は、人の声とそれ以外の音を聞き分けています。このような働きを参考にして、会話成分とそれ以外の音を分析し、どこの方角から話しかけられても人の声を認識する機能を開発してオープンに実装しました。また、オープンには言葉と言葉の間に入ってくるノイズを消す機能もあり、会議やパーティなどいろいろな角度から人の話し声がするような場面でも、自然に人の会話が聞こえるようサポートします」
電池切れの心配がない充電式も
ブレインヒアリングという考え方によって新たな補聴器を開発したオーティコンは、デンマークに本社のある世界的な補聴器メーカーだ。110年余の歴史を持つ同社は世界120カ国以上に補聴器と関連サービスを提供しており、1973年には日本法人も設立している。「聞こえに悩みを持っている人たちを第一に考える」ピープルファーストの理念に基づき、オーティコンは補聴器専用の高性能ICチップも開発し、90年代から補聴器のデジタル化、最近ではIoT化も推進してきた。実は「オープン」は、インターネット接続が可能でIoTにも対応。たとえば、ドアホンの音が直接補聴器に聞こえたり、補聴器の電池残量が少なくなったらスマートフォンにお知らせメールが届くなど、生活が便利になる機能も備えている。ブルートゥース接続によって、テレビや電話の音声を直接補聴器で聴くこともできる。
今年の11月には、新たにハイブリッド式の充電器も発売した。従来、補聴器は空気電池を使用するものが主流で、1週間くらいで電池を交換する必要があった。しかし充電式なら電池の交換は必要ない。しかも万が一充電をし忘れたり、使い切ったときもハイブリッド式なので、従来の空気電池を使用することもできるのである。
「携帯電話なら電池が切れてもしばらく不便なだけでしょうが、補聴器の電池が切れるとアラーム音やクラクションなども聞こえにくくなり、危険でさえあります。そのため今は、補聴器ユーザーの多くの方が充電式を求めていらっしゃいます。そうした声にお応えし、従来の充電器よりさらに進化したハイブリッド式を開発したのです」(木下氏)
仕事や人間関係などにも影響を及ぼす可能性のある聴覚。自身や家族の聞こえについて、いま一度意識してみて、補聴器に対する印象や情報も上書きしてみるよい機会ではないだろうか。
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