50歳フリー「広告写真で稼ぐ男」の痛快な人生 本領は職人、いい仕事こそが次の仕事を生む

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福永さんのスタジオであり事務所である有限会社アンズ(ANZ)で取材した。会社名の由来には「A~Z、あ~ん。広く、すべて」という気持ちを込めている(筆者撮影)
これまでにないジャンルに根を張って、長年自営で生活している人や組織を経営している人がいる。「会社員ではない」彼ら彼女らはどのように生計を立てているのか。自分で敷いたレールの上にあるマネタイズ方法が知りたい。特殊分野で自営を続けるライター・村田らむと古田雄介が神髄を紡ぐ連載の第17回。

「10月7日 都内の朝です。写っているのは、階段と手すりの影です」

カメラマンの福永仲秋(ふくなが なかあき)さん(50)は、FacebookやInstagramで日常的に写真をアップしている。仕事の合間やプライベートの時間に撮ったそれらの写真は日本のどこにでもある風景を切り取ったものだが、どこか幾何学的であったり幻想的であったりして、不思議な気づきを与えてくれるものが多い。

福永さんがFacebookのカバーに使っているスナップ写真(写真:福永 仲秋)

フリーランスのフォトグラファーとして、広告や雑誌等を中心に20年近く第一線で活躍している。出版不況や紙媒体の減衰、リーマンショックなどさまざまな向かい風が吹くなかでも、請け負う仕事の単価は下げず、むしろ上がり続けるような戦略を立ててこれまで実践してきた。誰とチームを組むでもなく、基本は1人で営業から制作まで完結させる。この手法で海外を含む大小多彩な企業と渡り合って、長年社会に作品を残してきた。

芸術か産業か。孤高か連携か

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フォトグラファーにはアート系や報道系の道もあるし、チームを組んでプロダクション形式で仕事を請け負うスタイルも多い。福永さんも若い頃はそれらの選択肢が眼中にあったという。そこから現在のように広告・雑誌を舞台に仕事をする職人スタイルに至った背景には、どんな出来事や思索があったのだろう。

芸術か産業か。孤高か連携か。フォトグラファーに限らず、多くの人が対峙するような人生の岐路を深く納得しながら選んできた。そんな福永さんの半世紀をたどっていきたい。

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